書店の利益管理

 

 

ま え が き
書店経営白書が平成4年2日に発表されたが、その内容は書店現状の厳しいことを物語る数値ばかりであった。書店の経常利益、原価率、人事(後継者)等、明るい材料は少ない。長くつづいた平成の景気も、昨年バブルがはじけて以降、消費傾向も低調である。消費税導入後、書籍、雑誌共、定価値上げをした結果、定価アップ分の自然増が昨年までは期待できたが、今は全く期待できない。 1960年代から70年代にかけては、GNPの伸び率より出版物の販売金額の伸び率が高い年がつづいてきた。ところが、80年代以降はほとんどの年で出版物の伸びがGNPより劣っている。すなわち1976年を境に出版業界は今迄2ケタ成長をつづけていたが、1ケタ成長に転落し現在に至るまで16年間依然として低迷をつづけている。この16年間に書店には人きな変化があった。コンビニエンス・ストアの台頭によって、書店の週刊誌、雑誌の売上げに影響がではじめた。早売り問題や配本部数のトラブルは、まだ全面解決しているわけではない。 第2の変化は郊外型書店の1980年代の台頭であった。現在3000店の隆盛をほこり、書店数の25%の割合を占める程になったが、現在は沈静化から安定、下降期に人ったといっても過言ではない。しかし郊外型書店が書店業界に与えたインパクトは強烈であった。それは書店のイメージを変えるきっかけを作り、新しい書店像を認識させた功績は評価しないわけにはいかない。具体的には書店の扱い商品の多様化に先鞭をつけ、出版文化に対して活字、サウンド、映像のマルチ化を教化してくれたのである。第3の変化は書店のOA化である。業界全体をとりまく出版VANの問題、電子出版の急激な増加等、書店をとりまく環境は、今やOA化をさけて通れない時代である。 第4の変化は書店の転・廃業の激増である。毎年1000店の廃業をみる状態である。しかし出版業界は30年以降マイナス成長したことのない業界である。構造不況とはいえ、社会のプラス業界として文化・学芸に貢献してきた。経済大国日本といわれて久しいが文化大国という勲章はまだない。業界の貢献は先輩書店の訓導によるところ大である。今回「書店の利益管埋」を書くにいたった経緯もそこにあった。儲かる書店経営を模索する結果、これが出版のきっかけとなった。この本は多くの業界紙から資料をいただいている。また明日香出版社常業部編「万引・シヨタレ防止・未入帳管理マニュアル』も参考にさせていただいた。本書の出版にあたっては日本書店大学伊東寛千男社長ポプラ社田中治男社長に、大変お世話になりました。紙上にてお礼申し上げます。
 
平成4年3月                能勢 仁

第1章
利益のあがらない原因

書店業界の現況
年間1000店を越す書店が廃業をしているが、出版点数、冊数は減少していない。出版社数、取次店数も減少傾向にあるわけでなく、ただ書店数だけが減少しているのである。販売伸長は1ケタ中位、3〜7%の伸び率で経費アップをかろうじて支えているが、赤字転落店が30〜60%あることは日書連の経営白書からもあきらかである。中小書店の経営環境は極めてきびしいが、大型書店も経費増に悩まされ経営危機にさらされている。 書店業界全体が構造不況にさらされているのである。熊本県書店組合が正味75掛獲得運動をはじめたが、書店の本音の出た運動ということができる。書店はこのままでよいのか、現状を今一度みつめて、何故利益があがらなかったのか、その原因を考えてみよう。直接的には取次に対する支払いが苦しくなることである。金繰りにつまる原因が書店にはあまりにも多過ぎ、利益がそれぞれのすきまから流出してしまうのである。

1 売上不振

 販売予算通りに売上げがあがらないと利益計画が狂ってくるのは当然である。売上不振になる原因が外部要因の場合と、内部要因の場合に分類される。外部要因であれば市場の変化、競合店の進出などは大きな打撃を与える原因となる。内部要因としては経営者の後継問題、人手不足、扱い商品の変化などがある。

2・在庫過多

 資金不足をおこす直接的な原因は在庫過多である。仕入れと販売のバランスがくずれると在庫過多現象となる。書店の棚卸しは年1〜2回行われるのが普通であるが他業種くらべて少ない。年1回の棚卸しで商品増加に気付いたのでは手遅れである。商品に金利がかかる原価意識を持ってほしいものである。ストックすべき商品、ストックしなくてよい商品の、コントロールができていれば在庫過多はありえない。商品管理の徹底が望まれるところである。

3 経費過多

経費の中の最大は人件費である。平成3年の書店の労働分配率は53.8%(日販・書店経営指標)であって、粗利益の半分以上は人件費に費やされている。1人当たりの平均月給は18万6670円で、前年比4.2%増加である。年間賞与は3ケ月分であり、年間平均支給額は318万円で、他業界とくらべて、出版社、取次とくらべて高いとはいえない。パート時間給は3大都市圏で656円である。労働力不足のおりから、人件費アップを考慮に入れながら労働力の確保と作業の効率化の対策を考えなければならなない。人件費に次いで経費率の高いものは地代家賃、水道光熱費、消耗品費と続いている。地代家賃は管理不可能費であるが、水道光熱費、消耗品費は管理可能費である。中でも長時間営業化しているため光熱賛の支出が多いので、高効率蛍光灯を使用するとか、不用灯の消灯の徹底とか経費削減を講ずる必要がある。 経費は野放図にすれば必ず予算をオーバーする性格のものである。毎月毎月、経費予算と対比してチェックしなければ、経費を抑制することはできない。

4 ロス商品の異常発生
 
棚卸しの結果、理論売差と現実売差にギャップの生じていることを知って慌てる書店が多い。棚卸しのやり直し、ストック商品の見直し、返品、伝票、帳票類の整理が急速に実施される。しかしロス発生の根は深く単純ではない。商品検品のルーズ、納品、返品伝票の杜撰な管理がつけとしてまわって売差に異常値が発生するのである。 ロスが異常発生した時大事なことは、その原因がどこにあるのか徹底的に究明し、その対策をたて実施し、その結果がどうなったかそこまで追跡しなければ、異常発生を断つことはできない。 ロスの原因にはいろいろある。入荷時の商品不足、伝票紛失、万引、値引き販売、内引きなど原因不明ということはありえない。万引が多ければ警備会社に依頼し、一挙にロス退治をする必要がある。中途半端では根絶できないのである。

5 売掛金の回収遅れ

外商に貸倒れはつきものという考え方は誤った考えであって、販売代金は100%回収されて当然である。従来貸倒れが多かった原因の中で、書店側の不備によるものが相当あった。外商の代金回収システムが不備であった。いわんや店売主力店が外商した時に代金回収に失敗する例は多い。それは販売の記録、請求書の提出、入金処理のルーチングが確立されていないために、未回収になる率が高くなる。外商担当者には常識的な事務処理が、店売店ではできていないのである。しかし掛売りをした以上は、掛売りの回収論理を知らなければ、火傷をするのは当然である。 現在はクレジットの時代であるから、代金回収も自動引き落とし、口座振込の方法を講ずるのは時代的要請である。

6 万引の発生

 書店のロスの中で、万引は書店の大小を問わず発生するものである。万引は外部の要因によって発生するのではなく、内部要因があるために、その結果が万引の被害の形になることである。 すなわち、書店は選択業種の商売であるために、お客様の商品決定がなされるまで書店側はお客様に無関心であることが多い。つまりノーサービス、ノーインタレストが万引を呼ぶのである。万引をする人間は勿論悪いに違いないが、万引をさせる要因を作った書店に責任がないとはいえない。入店時に「いらっしやいませ」と声掛けするだけで万引は半減すると言われる。これはお客様に対する関心の表れであって、万引をしづらくしていることに連動しているからである。

7 内部不正

 あってはならないことであるがロスの原因として考えておかねばならない。内部不正は金銭的流出と商品流出に分けられ、また単独犯と合同犯がある。最も悪質なものは金銭の合同犯である。特に外商担当者と経理担当者が共謀した内部不正は発見しにくい問題である。防ぐ方法は、経理伝票を1人だけで見るシステムでなく、何人かでチェックできるシステムにすべきである。商品持出しについても同様のことが言える。持出しチェックがあれば不正も発生しつらい。 内部不正は万引同様、内部の管理体制が整っていないと発生するのである。チェック機能の発達した書店に内部不正は侵入しづらい。

8 入帳もれ事故

 ロスには目にみえるロスと見えないロスがある。入帳もれは後者のロスであるが、管理態勢が整っていなければ発見できない。また発見したとしても申告しなければ入帳処理の動機にはならない。 書店は委託制業種であるために、返品業務はさけて通れない業種である。返品は精算業務であるから100%処理されなければならないが、ところが返品未入帳現象が多いのは困ったことである。末入帳事故は返品だけにとどまらない。送品事故の未入帳も多いのである。送品事故、返品事故いずれも書店が発見、申告して取次のアクションがおこるのである。100%入帳は、100%の申告と100%チェック業務がなければ成就されないのである。


第2章
利益計画の策定

1 予算の作成
 書店経営の中で問われるものに計画性がある。これは経営に対する目標管理であって、年度ごとの目標が必ずたてられているはずである。もしたてられていないとすれば、この書店はドンブリ勘定経営であって、すぐにでも年度目標、年度計画を作成して欲しい。この計画を具体化、数量化したものが予算である。 予算には収入、支出の2本の計画が必要で、1つは販売予算であり、もう1つは経費予算である。

a販売予算
 新しい期の始まる2〜3ケ月前から来期販売予算の作成がはじまる。今期の最終2ケ月の販売高は予想着地の数字で、今期販売実績をまとめる形となる。 来期販売計画は先期実績に対して今期実績の伸長率、来期の見通し、プラス要因、マイナス要因を勘案して策定しなければならない。プラス要因としては、出店計画、増床計画、リフレッシュ計画、増員態勢、販路拡大予定、得意先の大量受注の見込、駐車場確保・拡大等、いずれも売上げ増に直接つながる要因である。 何月ごろ、どの位の規模で実施されるのか、この見通しがはっきりしていないと、だろう予算となってしまって、予算割れをおこしてしまう。 マイナス要因を考えることは当事者としてはつらいことであるが、プラス要因以上に真剣に分析しておかないと大変なことになる。期の始まる前から対策をたててマイナスの数字ができるだけ拡がらないように、努めなければならないからである。 具体的な事項としては、競合書店の出店、既存競合書店の増床・リフレッシュ、ベテラン社員の退職予定、販路の縮小、客数減少傾向、周辺マーケットの地盤沈下現象、店前駐車禁止の施行、駐車場の喪失、店舗縮小、営業日数・時間の短縮等々、アクシデントの要因は数限りなくある。 予算作成に当たってこれらのプラス要因、マイナス要因を十分ふまえて、このとに伸長率、店勢、社会的要因、店歴、店長・社員のパワーを相乗して今期の販売数字が作られるわけである。 月別におとしこむに当たっては月別販売指数を乗じて算出するが、これは平均値であって正当ではない。 毎月の土・日の回数によって販売実績は変化する。従って季節指数は毎年微妙に変わることを認識していなければならない。 プラス・マイナス要因が何月頃から発生するか、これを予算に反映させる必要がある。プラスはおそめに、マイナスは早目に考慮しておくことが鉄則である。今年度の自然増の期待は極めてうすい。即ち昨年の雑誌の定価アップは、2〜2.5%前後、書籍は3.5〜4%といった具合で、今年は定価アップを期待することは予算を狂わせる原因となってしまう。一般的に予算の誤差はプラス・マイナス3%以内でなければならない。的中にこしたことはないが、期中のアクシデントによって売上減、予算未達成現象がよくある。期前にその兆候があればこれを十分に考慮に入れて、期中に予算の修正をしなくて済むように心掛けねばならない。

 b経費予算

 販売予算の100%達成が困難であるのにくらべて、経費予算の早期に到達することは実に皮肉な現象である。 これは販売のむずかしいのに対し、支出はブレーキをかけないと歯止めがきかないということである。経費節減主義をとってもとりすぎることはない。経費の中で最大の費目は人件費である。売上げに対して11.95%が平均値であるが、高い店3.44%、低い店11.29%で1.15ポイントの差がある。人件費統制を行えば節減は可能である。求人難の時代に逆行だと申される方がいるかもしれないが、必要な時間帯に人を投入し、閑散時に思いきった少人数主義をとる。閑散曜日、閑散時間は営業時間の短縮をはかる。定休日を設定しローテーションの円滑を計ることも考えられる。 同収増益、減収同益を考えることも経営の一方法である。目的は収益であって、売上額そのものではないことを肝に命じなければならない。 次に地代家賃の経費率が高い。最近、都市部のテナント書店の退店の多いのは高騰する家賃が原因である。売上げが伸びなくては経費アップを吸収することが出来ないからである。テナント店には家賃の外に共益費、宣伝広告費、リフレッシュ準備費、スポット経費と支出が多い。その上2年ごとの更新というきつい条件では現在の書店の平均的伸長率では経費吸収は不可能である。 家賃更改にあたっては慎重に交渉に当たることである。書店の粗利のうすいこと、季節性が少なく、集客性の高いこと、催事が行いやすい業種であることなど、ビル全体に対する貢献度を大いに主張することである。 広い面積をとらずに効率志向で家賃支払い額を少なくする努力をするか条件を工夫することである。 自社物件の場合には現実、家賃の支払いは発生しないが、減価償却費の負担が発生している。次に高いのが水道光熱費である。この費用は管理可能費であるから十分検寸の上、設定したい。例えば長時間営業の傾向が強い昨今、本当にそれだの収益があがっているのかどうかの検討である。夏場の冷房代は高額支出であるが、実際に節約の余地はなかったのかどうか、温度管理使用を採用したのかどうか、検討の余地は残されているものと思う。しかしサービス業である書店は、つまらぬところでケチると大魚を逃がすもとであることも考慮に入れなければならない。

 C収益構造

 販売予算、経費予算が策定されれば自動的に今期の収支バランスが判明する。すなわち総売上高予想、売上原価(21.5%と仮定)から売上総利益が計算される。例えば売上高1億円の書店は総利益は2150万円である。経費予算で全体の営業経費が売上げに対して何%かかったのか算出されているわけである。粗利率を21.5%と考えた時、営業費率がそれを超せば赤字であり、未満であれば営業利益とる。 書店経営指標によれば、営業利益は全国平均0.79%、3大都市圏1.07%、地方0.36%、専業0.16%、兼業1.32%となっている。 顕著なこととしては専業書店の低収益に対して兼業店の高収益なことである。単純にいって8倍以上のひらきがある。その差は何であるのか分析しないわけにはいかない。全国平均では構成比率は次の通りである。雑誌42、書籍36、教科書1、文具10、ビデオ・CD4、その他7である。「雑誌・書籍・教科書」と「それ以外」の比率は79対21「それ以外」の割合が増えている。粗利率の高い商品の取扱い額が高くなれば売上高対総利益率は向上する。専業書店の粗利率を21.5%と仮定すると、兼業書店(本79、「それ以外」21)の利益率を計算すると下の通りとなる。「それ以外」商品の粗利率30%とすれば、全体の粗利ミックスではこの書店は76.7%となり、専業店より1.8ポイント利益率が向上している。売上高1億円の書店では純利益180万円増となる。 能本県書店組合が正味75掛運動を展開しているが、この願いはすでに昭和25年以来から叫ばれている全国書店の悲願である。粗利ミックスの理論から考えると本75、「それ以外」25とし、本の粗利22.5%、「それ以外」粗利35%とすれば全体の正味は74.37%となり、悲願は達成されるのである。ただし、これは本だけで達成したものでなく、他商品の応援を得てのことである。しかし現代の書店来店者を分析すると、本以外の需要もふえ、他商品の供給も考えねばならない時代であることを知るべきである。文具は正味が7掛以上はあり得ない。小売業は粗利率30%以上必要ということを念頭におき、収益構造を考えたいものである。

2 コストダウンについて
 営業利益は売上総利益から営業経費を減じたもので、利益率の高低は売上総利益と営業経費の相関関係によるものである。この間係を表すものに増収増益、増収減益、同収増益、同収減益、減収増益、減収減益がある。景気の良い時には増売計画も予定通りゆき、利益計画も順調に推移することが多いが、経営環境がきびしくなると、利益をあげる方策に経費節約が唱えられるのは当然である。 経費には管理可能費と管理不可能費の2種類があり、経費節約は前者に対して行われるものである。節約は消極的な経営姿勢と見られがちであるが、本来は必要経費と冗費(浪費)のけじめを示すものであって、経営の本道には常に節約はついてまわるのである。節約をスローガンにしたものはどこの会社にもある。経費節約のキャンペーンを例にとろう。
  (例)営業経費半期5%ダウン
     期間は4/1〜9/30までとする
    各部経費節減責任者を決める
      中間で達成度をチェックする
    欲ばらずに小さいことから始める
     目標を達成した時は表彰する
 経費は金額によって数量化されるものである。書店経費の中で1番高いものは人件費である。次は地代家賃である。粗利の少ない書店経営の中で、この2つの経費をどう低くおさえるかによって利益率が変わるといっても過言ではない。書店(3大都市圏)の経費を日販・書店経営指標1991年度版から算出した。

a人件費(経費の56.7%)人件費の構成内訳は役員報酬、給料、福利厚生費で、経費の56.7%を占める。人手不足時代にあって上昇の一途にあり、特にアルバイトに対する雑給の時給は近隣流通業と比較されるために上昇が続いている。 また週休2日制は時代の流れであり、雇用条件の基調になりつつある。単純に隔週休の書店が週休2日制に移行すれば、それをカバーする人件費は自動的に9.16%上昇する。現状人員で乗りきれば労務オーバー、サービス低下につながり、今後に不安をのこすことは事実である。例えば暫定措置として月7日休日制の中間案をとれば、人件費アップは4.58%となり、この程度の経費増は売上アップで吸収できる。郊外書店の進出により、営業時間の延長、深夜営業が盛んになったが、ここにきて再考されている。そこでクローズアップしたのが労務シフトである。従来からローテーションと称する人員配置表は作成されていたが、この見直しが始まったのである。西武セゾングループの「アクロス」(婦人服専門店)では、午前10時から午後8時まで営業する標準的な店舗の勤務時間のシフトを5種類に分け、これを組み合わせている。
 
  1.午前9時45分〜午後6時45分(早番)
 2.午前9時45分〜午後4時45分(持早)
 3.午前11時45分〜午後8時15分(遅番)
 4.午後1時45分〜午後8時15分(特遅)
 5.午前9時45分〜午後8時15分(通し)

 営業が忙しくなる午後2時から7時までは、ほぼ全員がそろうようシフトされている。時給の上昇は前述したが、最繁忙時、必要時には時限時給として繁忙手当を出す方法もある。例えば年末年始、周年売出し、お盆休み出勤、競合店対策フェアなど。人件費のコストダウンは人の効率的配分以外にない。少ない人数で最大の売上げをあげ、報酬と休日が増すよう努めることである。
 
b地代家賃 (経費の16.2%)
営業経費の中で高い位置を占める経費である。この経費は管理不可能費であるために、当初の基準設定が肝要である。その後の更新年度、更新率が長く、低率であることが望ましい。これは日常の人間関係、支払い、報告、陳情等オーナーとの付さ合いがものをいうことが多い。他地区との比較資料、自店の集客貢献度の主張、競合店関係などオーナーに理解を求められるところはお願いし、管理不可能費の絶対額を上げない努力が大切である。
 
C減価償却費 (経費の5.1%)
経費中第3位である。この数値は設備投資の意欲と考えられる。即ち1984年では3.82%であり、7年間で133%上昇している。書店競争の激しさと書店の積極さが減価償却費に表れている。積極さは結構なことであるが、果たしてこれが有効な投資であったかどうか熟慮する必要がある。 それは減価償却費と相関関係にあるものが支払利息比である。現状では支払利息は売上高に対して0.99%である。支払利息は営業外費用であるが、営業費として換算した時には営業費全体の4.6%に相当する。

 d水道光熱費 (経費の3.9%)
この営業賛は管理可能費であり、経費節約の中で重要視される。特に電気代には大きな費用が支払われている。開店前から閉店後まで営業に照明はなくてはならないものであるが、営業時間中だけの照明に改めるだけで、10〜15%の経費節減は可能である。即ち営業時間以外には最低限の照明で仕事をすることである。消灯運動の徹底が経費を少なくする。 蛍光灯についたほこりをふきとることによって照度は回復する。また高出力低経費の蛍光灯を使用する方法もある。

 e消耗品責(経費の2%)
文房具、紙、セロテープなど消耗品の支出もばかにならない。売上げに対して0.42%であるから、年商1億円の書店では42万円が消耗され、1日1260円が消えていく勘定となる。

 fそ の 他
返品量を減らして人件費を減らす、返品作業を店内ですることによって人件費をうかす、不要な常備商品は頼まない、適正送品で陳列作業を少なくし、その分接客サービスにむけ、販売増を考える。 前記は顕在的なコストダウンについてであったが、潜在的なものについてはコストアップを考えなければならない。それは効率的な時間使用とやる気である。特にやる気の有無は経営を左右する重大なものである。経営者、店長はやる気のでる環境づくりをすることが今求められているのである。

3 減価償却・繰延資産

 a減価償却
形のあるものには必ず原価がある。書店が設備、施設を製作したり、購入したりした時、それぞれの什器、備品に決められた耐用年数に応じて、毎年、経費として計上する。すでにかかってしまった経費を分割して償却しようとするものである。償却の仕方に定額法と定率法がある定額法はかかった費用を耐用年数に応じて、毎年.均等に焼却してゆく方法であり、耐用年数の永い施設には不向きである。それは残存価値は平均的に低下しないからである。 定率法は残存価値にあわせて法定によって物品を償却する方法である。償開始時期に厚く、後半低率になる割合である。耐用5年のものであれば、初年度に37%の償却費になる。年間償却額は逓減するから初期の償却費が大きく、損益計算は苦しいが、あとになるほど負担が少なく楽になる。

 b繰延資産

費用支出は今期に行われたが、費用の効果は、今期だけでなく、翌期以降に及ぶものがある。これらの支出額は、その効果の及ぶ期間にわたって繰延べ負担させることが合理的である。繰延資産は、財産としての価値はないが、将来の収益に負担させるため繰延べられる特殊な資産である。

C繰延資産の種類

1.創立費
会社の設立のために支出した費用、定款などの作成費用、株券の印刷代、創立事務所の賃借料、設立登記の登録税など。
2.開業費
会社設立後、営業活動を開始するまでに要した開業準備費用、通信費、土地建物の賃借料、宣伝費など。
3.開発費
資源の開発、新事業の開始、新製品の開発、市場開拓、新技術の導入などに要した費用。
4.試験研究費
新製品や新技術発明のために特別に支出した費用。
5.建設利点
会社の設立後、開業までに2年以上かかるため、株主に特別の条件で配当した額。
6.新株発行費
増資など、新株を発行する際に要した費用。
7.社債発行費
社債を発行する際に要した費用。
8.社債発行差金
社債発行によって生じた償還差額。


第3章
書店の実体を知る

1 棚卸しの諸問題
 棚卸しは決算税務の手続さ上の1手段である。書店は年1〜2回、つまり本決算、中間決算の時に実施されるのがせいぜいであって、他業種の毎月棚卸し、隔月棚卸しにくらべれば回数は少ない。棚卸しは書店の経営体質、特に在庫商品の健康診断に相当するもので、棚卸し回数の多いほど異状値は早く発見できる。年1度の棚卸しで異常に気付き、そこで再棚卸しを実施すると、1年半近くの日数が経過してしまうことになる。この間に症状は進行し回復に時間がかかる結果となってしまうのである。

●棚卸しによってわかること
 1.商品在庫高 (商品の増減)
 2.商品回転率
   3.商品原価率
 棚卸しは決算報告書作成に当たっての分析行動である。そこで決算とは何かを考えると、決算は企業の1期間を区切ってその営業期間中の営業概況、経営成績、財政状態を示す行動で、経営成績を示すものが頂点計算書であり、財政状態を示すものが貸借対照表である。 決算期日に合わせて棚卸し実施と同時に、当期実仕入高、期末末請求残高、当期売上高、当期掛売上高、返品未入帳高、不良在庫の処分、商品原価率の算出、棚卸し金額の決定が総べて行われる。
 
a当期実仕入高
  取次を中心とした期中1年間の総仕入高である。ただし常備寄託商品の定価額は棚卸し額より差引く。長期委託商品は税務上、売掛扱いなので在庫商品として棚卸しを行い、未請求勘定として処理する。 期末目前後の仕入伝票は要注意である。即ち、期中に到着した商品であっても、請求日が来期の商品がある。その反対に期末数日後到着した商品が当期の請求であることがあるから要注意である。

 b期末未請求残高
  この中に入るのは常備寄託商品と長期委託商品である。この両者は伝票によって計上が可能であるが、注意点としては伝票上は正味金額であるので定価に換算する必要がある。

 C当期売上高
 当期1年間の総売上げの集計である。掛売上げはこの中に含まれない。販売予算に対して100%達成が望ましいところである。そこで決算期最終月の売上げは1番注目されるところである。掛売、代金回収促進月間に指定したり、社員購買で予算を達成させることもある。 売上げの中に書籍・雑誌の平均的粗利益率と著しく異なる粗利益率の取引が含まれている場合は、勘定科目の上で、区分けしておく必要がある。 例えば教科書販売がある場合、文具の売上げがある場合、図書券の販売がある場合、スタンド卸し販売がある場合には、それぞれ教科書売上げ、文具売上げ、図書券売上げ、卸し売上げなどの勘定科目を付けて、一般書籍、雑誌売上げと区分して売上げを計上することが望ましい。

d当期掛売上高
100%代金回収可能な掛売が望ましいが、中には不良債権がある場合もある。いわゆるコゲつきである。これらの不良債権について決算時期において取立て不可能として、掛売金から欠損金として落とした方がベターである。つまり回収不能掛売をそのまま計上しておけば、見せかけの売上げ、架空売上げを作り、余計な税金を払うことになる。

 e返品未入帳高
  会計処理上は返品未入帳商品と未着商品は在庫商品として棚卸しを行い、未入帳勘定として処理をすればよい。
 I不良在庫の処分
  掛売代金回収不能分を欠損金で落とすのと同様に、不良商品についても棚卸しの時に、ショタレ損として処理をする。税法では、つぎのような場合には、その商品について棚卸し評価損の計上が認められている。
  1.災害により商品が著しく損傷した時
  2.商品の破損型くずれ、棚ざらしなどによって、通常の方法では売れる見込みがない時
  3.季節商品などで売れ残ったものは、過去の実績からみて安値処分せざるをえないことが明らかな時
 
端的には返品不能品の処分である。ショタレを古本屋に売却処理した時は、仕入原価を売上勘定として、その差額をショタレ損として粗利益率の低下事実を明らかにしておく必要がある。税務署への証明として買い主の領収明細書を決算書のショタレ損勘定の内訳として添付しておく。
 
 g商品原価率の算出
  商品の原価率の第出は次のページの算式である。
 h棚卸し金額の決定
  棚卸しは棚卸し金額を決定するための作業である。書店の在庫評価の方法としては、売価還元法が一般に採用されている。売価還元法による在庫金額の計算は、つぎの手順を経て行われる。
1.在庫商品の売価(定価) と総合計する
2.売価在庫に原価率を掛けて、期末の原価(正味)在庫を求める
 実地棚卸しを終わって、現実粗利益率と理論粗利益率の差が1.5%を超える場合は、抜け穴からロスを生じていると考えられるので、その原因を究明して対策を講ずる必要がある。

●ロスの原因
a万引・盗難
b従業員の不正
cショタレなど不良在庫の発生
d歩安入帳
e値引き販売
f入帳おくれ

2 ショタレの処理

 書棚の垢ともいうべきショタレは殆どの書店にある。その原因としては、客注流れによるもの、返品もらし、買切商品の残り、販促商品の残り等々あるが、時間の経過と共に商品価値が失われ、販売商品として相応しくなくなってしまったのである。 買切商品以外は取次から逆送商品の形で送り返され、書店の嫌われ商品がショタレだったのである。 棚卸しの際、販売に相当しない商品であるから在庫商品としてカウントしない方がよい。つまり完全な返品不能品として、最後の手段として古書店、回収業者に売却するのである。 仕入原価を売上勘定として、その差額をショタレ損として粗利益率の低下事実を明瞭にしておく必要がある。 例えば、仕入原価4万円の商品を、ショタレ品として4000円で売却処分した場合、振替伝票に売上げ4万円、現金4000円、ショタレ損3万6000円と処理する。この場合、税務署への証明として買い主の領収明細書を決算書の、ショタレ損勘定の内訳として添付するほうがよい。ショタレ損勘定は、売上値引きと同様に売上高をマイナスする性質のものとして、売上値引勘定の次に1科目設けたほうがよい。参考までに、古書専門店の買い値は1〜1.5掛が平均である。いわんや回収業者の買い値は目方であるから問題にならないほど安い。1キログラム12円〜13円である。9号ダンボール1杯 (50冊・売上原価4万円) は260円前後の取引となる。

3 未入帳について

 利益のあがらない書店経営の原因の中で、未入帳の占める部分は大きい。万引やショタレ本は顕在的原因であって、みればわかる現象であった。これに比べて未入帳は調査・申告業務であって、潜在的原因を顕在化する仕事である。従って書店がこの業務をやるかやらないかによって大きく差がつくのである。万引やショタレが書店側の無関心や不注意によって発生することが多いのに対して、未入帳は書店側のミスもあるが、主として取次側のミス?怠慢によって発生することが多い。
 委託制圧の落とし子である返品は最大の痛恨事である。返品処理がスーパー業界のように発生主義であればよいが、出版業界は到着主義であるから、そこで時間的ズレ、突合業務を発生させるのである。委託ルールの枠内だけの返品可能業界であるから、ルール検査が返品の際に必要条件となってしまうのである。 こうした商習慣の中で、書店は永年業務としてきた割に入帳に関しては寛大なのか、不勉強である。 このことについては、明日香出版社営業部編「万引・ショタレ防止・未入帳管理マニュアル」 に詳述されているので、そちらを参考にしていただきたいと思う。ここでは未入帳の原因について考えてみることにする。

 a未入帳の原因−送品事故の場合
 この事故は、取次→運送会社→書店の配送中におこる事故である。事故発生と同時に、書店は事故を証明する帳票 (オリジナル伝票は手元に残してコピーを送る) を提出して入帳を依頼するのである。 事故の中味は不着事故、過着事故、誤着事故(商品違い事故、他店商品混入事故)、荷傷み事故がある。形態的には次にあげる事故がある。

 1.送品箇数不足事故
 送品事故の中で1番恐ろしい事故である。送品ダンポールが1箇紛失すれば4万円前後の損失である。箇数不足事故は運送会社がからむために即刻申告、早期解決が肝心である。たいていの場合は翌日配達か、他店に誤配されていることがわかり解決することが多い。運送会社のミスであれば箇数不足証明をもらい取次に提出する。

 2.荷割れ事故
 荷分れ事故は常備商品、長期商品、催事商品、注文商品など箇数の多い商品の中、箇数が不足するもので、送品途中の事故としてよくある。誤配によることが多い。

 3.冊数不足事故
 送品事故の中で1番多い事故である。新刊書籍、注文書籍、雑誌の不着が主な内容である。

 4.他店商品混入事故
 他店分混入事故に2通りある。1つは他店商品が自店講求で混入した場合と、もう1つは請求されずに商品だけが混入した場合である。

 5.商品傷み事故
 この種の事故処理は曖昧になりがちである。それは申告することによって弁送されることがあるからである。事故品を無伝票で返送し、弁送品に伝票がついていれば、2重請求を受けたことになるのである。

 6.価格違い事故
 補充注文商品に多い送品事故である。新刊書籍の価格違いは、価格の訂正伝票が追送されてくるので、処理の手間はかからない。

 7.正味違い事故
 正味違いの入荷は結構ある。この分についての差額正味の入帳の申告は、例外的に月1・2回程度にまとめて行うほうが有効である。入帳処理のための申告はすべて早いことが必要条件であるが、正味訂正の場合はまとめたほうが処理しやすいと思うからである。

 8.客注商品督促のダブリ入荷事故
 客注商品であることを証明する客注たんざく2枚を付し、客注ダブリ分と返品伝票に書けば、入帳了解として処理される。従って証拠となるたんざく2枚が命綱なのである。

 9.逆送品事故
 注意しなければならない点がある。それは返品しない本が逆送されてくるケースと、返品期限内の返品可能商品の逆送のケース、さらにフリー入帳の補充カードが入っていて逆送されるケースである。 逆送品の冊数不足事故もある。逆送品といえども即時開梱、検品の習慣で処理しないと返品できる商品もみすみす不可能にしてしまう時がある。

 b未入帳の原因−返品事故の場合

 万引ロスもこわいが、万引は大量の冊数は発生しにくいのにくらべ、返品未入帳の場合はダンボール単位であるために大量ロスとなり、結果としては大量万引と同罪である。返品は取次店に商品を原価で売掛けたものであり、未入帳とは、未入金と同じことになる。書籍返品はダンボール1箇で3〜4万円はするから、返品伝票と入帳伝票を突合させる仕事は販売以上に重要な仕事となる。返品未入帳になりやすい事例について考えてみよう。

 1.返品伝票を入れ忘れる
返品起票者と荷造り者が別々であったり、返品作業途中で席をはなれたり、中断するとこうした事故が発生する。

 2.店名印を押し忘れる
 返品未入帳の大多数の原料は、この店名印忘れといって過言ではない。店名印のない返品荷物は100%未入帳である。取次はどこの止から返品されたものか調べようがないからである。店名印の不鮮明なものも入帳処理をおくらせる原因となる。

 3.返品月日の記入を忘れる
 未入帳処理をしている際、取次からいつの返品かとたずねられた時、意外と無日付の返品伝票に出くわす。事故処理調査のネックになる材料であるから、返品の際は店名印と返品月日はセットで確認してほしい。

 4.不鮮明な起票
 カーボンは新しいものを使用し、3枚複写が下まで通り、はっきり読めるように起票する。数字、字句を判読するような伝票は作らないことが、返品担当者の基本的条件である。

 5.定価、冊数の記入を忘れる
 事故の原因は返品作業中の仕事の中断である。あるいは引き継ぎの不徹底であって、冊数記人のない事故は一番困る。定価については書名、雑誌コードで調べる手だてはあるが、冊数については無記入の場合には原則的には1冊で処理される

 6.定価、冊数を間違えて記人する
 よく間違えるのはセット商品である。セット商品はセット定価とセット数を記入し、総冊数を記入しないことである。

 7.他取次ダンボールを使用したために、返品荷物が他取次に行ってしまった
 他収次のダンボールは絶対使用しない習慣とすること。ダンボールがない時は、ミカン箱、文具メーカーの箱などを使用する。大きすぎるダンボール使用は運送上支障をきたすので避けたはうがよい。

 8.返品ダンボールが運送中にこわれてしまった
 この切腹事故も多い。運送途中の事故では返品店不明になるケースがある。このための方策としては、こわれたダンボールは使用しない。あるいは補修をして使う。

 9.雑誌・書籍を混入して返品してしまった
 初歩的な返品ミスである。初心者に返品をまかせきったり、返品管理不在であると、こうした初歩的なミスをする。混入を防ぐ方法は雑誌返品と書籍返品を分離して返品作業棚に置くことである。


第4章
仕入れからみた利益確保

1 書店の請求勘定
 書店が請求を受けるのは取次が主である。多品種取扱い、多頻度仕入れの業種である書店だが、他業種にくらべて支払い口座が極めて少ない。これは出版業界の特色であって、1極集中の取引形態が多いからである。一般書店ではダブル帳合の対取次関係は少ない。専門取次プラス大手取次の取引は大型書店、チェーン化書店に多いパターンである。 大取次に関しては、書店はトーハン系、日新系を中心の流れとして、大取次の系列化現象が顕著である。 これと平行して第2グループの取次は個性的な取引を展開している。即ち、トーハン、日販を追う大阪屋、栗田出版販売、中央社、太洋社、協和出版販売が地域性を発揮したり、きめこまかいサービスを売りものにして成績をあげている。 第3のグループとして専門性発揮の専門取次の日教販、日本地図共販、鈴木書店、地方・小出版流通センター、鍬谷書店、西村書店、日本キリスト教書販売、日本洋書販売、明文図書、八木書苔店、柳原書店、松沢書店等がある。 第4のグループとして教科書会社、直取引版元がある。 読者が多様化し、生活様式が変化すれば、書店取扱商品が多様化するのは当然であって、従って書店が志向する取次も多くなるのは自然の理である。 大取次はワンストップショッピングできるように、あらゆる書店意向に沿えるよう、総合性を発揮せんと、ますますマンモス化してくる。専門性を包含した総合商社たらんとするものであるが、自己矛盾を内在することもいなめない。 書店の支払勘定は取次1社にしぽられるもの、数社にまたがるもの、特定時期に限って発生するもの等によって、各種の請求形式に対応していかなければなら 概ね、月末支払勘定が多いが、その外に支払日を指定した取引も発生する。書店で唯1約手を発行する教科書関連支払いは、手形決済日が資金繰り上重要になってくる。 書店規模が大人きくなるにつれ支払い先が多くなるのは通例だが、資金計画、資金繰り表作成は絶対不可欠な条件になることは間違いない事実である。

2 正味と仕入れ

 a正味について
 正味とは商人がメーカーから買入れるときの仕入値段をいう。出版業界では、取次が出版社から仕人れるときの仕人正味(入り正味) と、取次から小売書店へ敗売するときの卸正味 (販売正味、出し正味) の2つが含まれる。仕入正味は定価の67〜72%の例が多く、書店出し正味は77〜81%が多い。この差額は取次のマージン (取次口銭) といわれるもので、定価の7.9〜9%ある。以前は取次7分口銭といわれた時代が長かったが、今は口銭が拡大される傾向にあり、弱小、新規出版社は低正味を強要されているのが現状である。 従って小売書店のマージンは定価の19〜23%に相当する。書籍はその性格が多種多様でその定価は製作原価と売行き見込みに基づいて出版社により決定され、従って正味も、枠でなく、版元対取次の折衝により個々に決められてきたために、正味体系は複雑多岐となり、1506社で2920種 (日書連調査1978年) ある。1970年から出版社別1本正味と定価別段階正味の新正味体系が実施されるようになった。しかし依然として複雑であることには変わりはない。 版元1506社中、定価別段階正味を採用している版元は283社である。全体の18.7%に相当する。熊本書店組合をはじめ全国各地から75掛正味獲得運動が
ほうはい
澎湃としておこっているが、正味体系の変更には時間がかかりそうである。出版社にしても正味率をいじることは経営の根幹にかかわる問題であり、簡単に改正することはできない。書店自身も経営の苦境に立ち、原価率の向上が利益を生む直接的な要因であるから、粗利の拡大を願うのは当然である。中に入る行司役の取次の裁量と、業界三者の利益が確保され、正味率の改定がなされれば申し分ないのだが、数多くの折衝と、販売増の妙案がなければ原価率アップの原資はでてこないであろう。 消費税以降、現行実施されている正味体系のうち、主要販元について以下掲げてみよう。なお定価別段階正味は次の通りである。

 515円以下………76.5掛
 516円〜802円………77掛
 803円〜1750円……78掛
1751円〜4325円……79掛
4326円以上………………81掛

この外に文庫については殆どの版元は、77.5掛の出し正味である。

主要版元の正味は次の通りである。
朝日新聞社  79
        77.5 文庫
明日香出版社  77
岩 波 書 店  77 文庫・ブックレット
        81 新書、児童書
        82 単行本、辞書、6法
        83 高額書籍
旺 文 社  定価別
                     76.5 515円以下商品

オ ー ム 社 81.5
                     84 学会商品
                     85 電気協会商
倍 成 社 78
                     77.5 515円以下商品
角 川 書 店 77.5 文庫
                     78.5 515円以下商品
                     79 単行本
82 専門宝口78
                     77.5 515円以下商品
河出書房新社 定価別

学    研 定価別
                     76.5 515円以下商品
                     77.5 手のり文庫
教育書籍    74 学参
                     79一般書籍
                     教学研究社 75
講 談 社 定価別
                     77.5 文庫
                     82 専門書、豪華本 
光 文 社 定価別
                     77.5 文庫
                     産能大学出版部 78
三  省  堂 定価別 

                     76.5 515円以下商品 
鷺 書 房   73
集 英 社 定価別
                     77.5 文庫
                     82 豪華本
主婦と生活社 定価別 
主婦の友社 定価別
小 学 館 定価別
                     77.5 文庫
                     82 豪華本
昭 文 社 71 地図
                     77 ガイドブック
新 潮 社  77.5 文庫
                     78 一般書
                     821万円以上の商品
実業之日本社  78
数 研 出 版  定価別
青春出版社  78
成美堂出版  定価別
                     76.5 スポーツ文庫
誠文堂新光社   定価別
                     76.5 515円以下商品
                     81玉川百科
増進堂受験研究社 76
大修館書店  791般書
                     81 専門書
                     83 大仙漢和辞典
高橋書店  70 絵本
                     75 日記
                     77 実用書
タイヤモンド社  79
筑摩書房  77.5 文庫
                     79一般書
中央経済社  80
中央公論社  77.5 文庫
                     79一般書
                     82 豪華本
中 経 出 版  77
東京大学出版会  82
東洋経済新報社  80
                     821万円以上の商品
徳間書店   定価別
                     77.5 文庫
永岡書店   77
日本経済新聞社  79
日地出版  71地図
                     77 ガイドブック
日東書院  75
日本交通公社   定価別
日本実業出版社  77
日本文芸社  77
日本放送出版協会 78
                     811万円以上の商品
白 水 社  81文庫・一般書
博文館新社  75
カレンダー
                     79 日記 事前注文分73
早 川 苦 房  77.5 文庫
                     79一般書
PHP研究所  定価別
                     77 文庫
扶 桑 社  77.5 文庫
                     78一般書
文 英 堂  定価別
                     70 ヤングスタディ
                     75 小中間題集
編 式 書 店 77.5 文庫
                     78一般書
文化出版局  定価別
文芸春秋  定価別
                     77.5 文庫
平 凡 社  定価別
ポ プ ラ 社 78
                     77.5
                     515円以下商品
三 笠 書 房 定価別
                     77.5 文庫
みすず書房  80
未 来 社  81
明 治 図 書 80
山と渓杏社  定価別
有 斐 閣  80 新書
                     81専門書

 書店が仕入れをする時、売れ筋をみて仕入れるのが普通である。すなわち売れ筋のランクに従って10冊、5冊と注文単位が異なってくる。この場合には正味を意識することはない。高正味だから少なく注文、低正味だから多く注文するこはない。ということは書店人の仕入感覚の中に残念ながら正味意識は極めてうすいといわざるを得ない。 しかし実際には販売マージンが異なることによって利益額に相異が出ることはわかっている。この現象は商品優先の仕入感覚で、正味が無視されているのである。書店人が仕入原価に一番関心をもつ時は単品一括採用・納品の時である。注文主より割引きを要求され、その条件をOKする反面、仕入面でそのディスカウント分をカバーしようとする。つまり5〜1○%の歩引きをしても、版元から献本で5〜10%もらえば実害は帳消しとなり、通常粗利を確保することはできるのである。店頭において、こうした原価意識を働かせた仕入れはできないものだろうか。その方法に低正味商品集中仕入れがある。

b低正味商品
 代替性のきく商品で、競争の激しいジャンルには、取り扱い確保を願うために特別の仕入条件を出し、書店にアピールしようとする動きがある。一般的に低正味商品は暦、絵本、地図、実用書、ドリル等である。いずれの商品も読者が商品を指定してくることは殆どない。店頭陳列商品の中から選んで購買されるのである。 であるならば低正味商品を集中的に仕入れて販売に当てればよい。利は元にありといわれる通り、商人は原価マインドがなければ利益を蓄積することはできな
因みに低正味と思われる商品は次のようなものである。

高島暦   40掛
神宮館・暦   40.5掛
昭文社・地図    71掛
目地出版・地図  71掛
教育書籍・学参   74掛
文英堂・小中学参  75掛
教学研究社・学参  75掛
増進堂受験研究社  76掛
日東書院   75掛
博文館・日記   73掛
高橋書店・日記   75掛
などがある。博文館日記は8月1杯注文分について73掛になる仕入条件が版元から提示されてあるので、その期間中に発注すれば高い粗利は確保できる。 新学期の辞書セールにしても、市会用カタログに特別正味提供品があるので、販売可能数を勘案して、このチャンスに乗りたいものである。 出版社は書店に仕入促進のために各種の提案をしてくれている。正味安の外に、期間中の売上スリップに特別報奨制度を設けたり、飾りつけコンクールの実施、販売伸長率に対する報奨等、書店に利益が還元されるよう版元の配慮がある。正味意識と同様に版元支援策を有効に使いたいものである。

3 資金繰りと資金計画

日書連が 『書店経営白書』―出版業界諸賢に書店の窮状を訴える―が発表された。これは年間1000店にも及ぶ書店の廃業の実態を赤裸々に物語った白書であり、書店の経営の根幹にふれたものである。つまり経営的なゆきづまり=利益が出ない、儲からない、経営の不成立、その結果、破産の前に転業するか、余力を残して廃業し老後を考える。といった極めて悲惨な敗北宣言である。
 この様な状態になる前にあらゆる手はつくしたはずである。販売促進、経費節減、人件費減、営業時間の延長、利益率の高い商品の取扱い等々、企業努力の粋をつくしてこの結果である。到達するところはマージンの薄さにあり、これでは書店は食えないの論法に至るのである。 ここでもう一度、書店の経営が苦しくなる原因、つまり資金圧迫をおこす引金は何であるのかを考えてみよう。
 a資金繰りが苦しくなる原因
1掛売りが増加する
2掛売りの貸し倒れが発生する
3在庫過多現象がおこる
4内部不正が発生する
5万引が急激にふえる
6不良在庫が目立ちはじめる
7設備など固定資産が過大投資だったとき
8経費が増加してきたとき
9パート・アルバイトを採用しすぎたとき
10経営者の過大給与に原因する場合
11経営者個人の交際や寄付金が過大なとき
12経営者個人の不動産取得、動産取得がなされたとき
13借入金が増えたとき
14利益額が不足する場合
15営業以外の事業資金の支出を行ったとき
16株式投資などによる損失補填をした場合
17賭博行為などの損失補填をしたとき
18病気・けが等医療費の支払いがあったとき
19水害、火災、盗難等の被害にあったとき
20他人の債務保証をし、代理弁済したとき
21高額な租税を支払った場合
22借入金を無理に返済した場合
23借入金の支払い利息が過大なとき
24割引販売が増大したとき
25開業資金が不足していた場合
26営業規模を拡大して多額な運転資金が必要になった場合
27売上不振で赤字経営に陥った場合
28景気変動あるいは政策の変化によって損失をこうむった場合
29出店ばなしに失敗したとき
30資金の流れがスムーズにいかない場合

 前記のような理由から経営が苦しくなるのが常道である。最終的には資金の流れがスムーズにいかなくなり、融資、返済、借入増、返済増、返済不可、融資不可、赤字の雪ダルマ化となり経営がゆきづまってしまうのである。書店の場合、端的に現れるのが、取次の月次請求金額が、月次売上金額を上回ってしまう算術的赤字帳尻現象である。 書店独特の経理である常備、良期等の未請求勘定、延勘によるかくれ仕人れ等が十分に理解、準備がなされていないと、仕入れ 販売の逆転現象が発生し、資金につまるのである。これは過剰送品、在庫過多、売上不振以前の問題であって、資金計画、資金繰りの欠如が暴露したにすぎないのである。 経営において、一定期間の現金収入と現金払いの予定を見ると、収入金額と支払い金額のバランスがくずれる状態になることがある。つまり、支払い金額が収入金額を大きく上回る場合もあれば、支払い金額より収入金額が大きく上回ることもある。学参関係を大量に売る書店の新学期経理、年末正月の超繁忙書店の経理などはその例である。 資金が多く余ればその運用を考え、不足すれば資金の調達を考えなければならない。これが資金繰りである。資金計画は、資金繰り表によって示されるのである。
 b書店の資金計画
 @仕入金額の把握
 書店は日曜日を除いて毎日商品が到着する。週刊誌、雑誌、新刊書籍、補充書籍、教育・教材商品がその中味であるが、日計のかたちで雑誌仕入、書籍仕入、教育用品仕入を把握したい。特に書箱については請求条件によって作表を統一しなければならない。毎月の書籍仕入に入れる項目は新刊委託、買切商品、補充商品の3種類である。この3種類の商品を合算したものがその日の即請求の書籍仕入金額となる。従って延勘書籍、長期委託書籍、常備寄託書籍の3種は別途、独立して毎日計上しなければならない。毎日、書籍仕入、延勘、長期、常備の仕入金額を記録し、請求月の欄に講求額を記入する必要がある。 延勘、長期は書籍だけではない。雑誌長期、教育用品長期もあり、仕入日計表の中で把握し、請求月の欄に請求額を転記する作業がある。 前記、書籍、雑誌、教育用品の3ジャンルに分け、請求条件ごとに整理しておけば、毎月の請求金額の推定ができる。

 1.仕入金額の把握
 書店は日曜日を除いて毎日商品が到着する。週刊誌、雑誌、新刊書籍、補充書籍、教育・教材商品がその中味であるが、日計のかたちで雑誌仕入、書籍仕入、教育用品仕入を把握したい。特に書箱については請求条件によって作表を統一しなければならない。毎月の書籍仕入に入れる項目は新刊委託、買切商品、補充商品の3種類である。この3種類の商品を合算したものがその日の即請求の書籍仕入金額となる。従って延勘書籍、長期委託書籍、常備寄託書籍の3種は別途、独立して毎日計上しなければならない。毎日、書籍仕入、延勘、長期、常備の仕入金額を記録し、請求月の欄に講求額を記入する必要がある。 延勘、長期は書籍だけではない。雑誌長期、教育用品長期もあり、仕入日計表の中で把握し、請求月の欄に請求額を転記する作業がある。 前記、書籍、雑誌、教育用品の3ジャンルに分け、請求条件ごとに整理しておけば、毎月の請求金額の推定ができる。

 2.返品金額の把握
 委託制度が流通の根幹であるために、返品は必然的に派生する問題である。問題は返品率にあって、かつての高度成長経済時代の大量生産、大量宣伝、大量仕入、大量販売、大量返品は今や許されない時代である。生産コストの無駄、流通コストの無駄が利益をくってしまい、非生産的な返品現象を改善する動さは当然であった。返品減少運動は業界三者の共通した願望であり、送品過多の抑制、過剰仕入の反省等各種の方策がとられてきた。返品を資金計画の面から考えると、返品は販売と両輪の関係にあり、仕入れの蛇口に対して、排出口の役割を果たしている。仕入額、販売額、返品額のバランスがくずれてくると資金繰りは当然苦しくなる。販売不振月は、当然返品促進月
であり、繁忙月は返品率の低下する月となる。在庫過多現象は典型的な仕入れ、販売、返品のアンバランス現象であり、販売管理、商品管理が行われていない証左である。 書店では仕入記録と同様に、毎日の雑誌返品、書籍返品の金額を記録せねばならない。その他長期委託、常備寄託については指定された返品月に返品することが資金繰りを圧迫させないことはご承知の通りである。
 返品入帳にはタイムラグのあることを念頭に置かねばならない。最低10日間の入帳のずれのあることを考え、早め早めに返品することが資金ショートをおこさせないコツである。入帳されるものと思っていた金額がずれた時には大変である。それからの資金手当では無駄な金利を発生させることになる。仕入金額、返品金額が予想できれば資金計画は万全となる。

 3.売上金額の把握
 売上日計表の作成である。単純なものは完上総金額だけの記入から、書籍、雑誌、図書券に分類して記録する書店、ジャンル別に詳細に売上げを記録する等、記録方法は書店の規模、経理習慣によって異なるが、最低、書籍売上、雑誌売上、図書券売上、レジ過不足についての記録は必要である。その他、粗利の少ない扱い商品、例えばテレホンカード売上、ファックスサービス料等は別途記録しておいた方がよい。 売上金の把握は資金計画上は勿論、経営の根幹をなす最大重要データであり、遅滞なく正確に記録されるべきである。レジの過不足金はないに越したことはないが、人間の行うことであり、ある程度のミスはやむを得ないこともあるが、朝礼、会議等を通じて常に注意していればどんどんゼロに近づく。打鍵を意識するかしないかの差で相当のひらきが出るのである。

 4.机上在庫の把握
棚卸しは年に1乃至2回実施され在庫金額は把握される。他企業では毎月棚卸しを行って月次損益を出しているのが常識であることから考えると、書店も他企業に接近する努力が要求される。毎月棚卸しができないとすれば、せめて机上在庫を把握して商品在庫の増減をつかみ、利益管理の基礎データは常に手元におくベきである。
期首在庫、期中仕入、期中売上、期中返品から期末在庫金額は机上計算できる。毎月計算される
ことにより、在庫過多、万引、ロス等は発見できる。ただし、ショタレ、死に筋商品の発見は机上では絶対にできない。現場で商品をチェックしなければできない商品管理の範疇であって、従って店頭の品揃えから目をはなすことはできない。棚を活性化するために常備比率が年々減少しているが、この動きは棚効率をよくするための施策であって棚担当者が常に棚の管理をしていれば、貢献度の悪い商品は返品するか、陳列期間を短くするであろう。棚の新鮮化に努めることにより、商品回転率も上昇する。つまり死に筋商品の駆逐ができるのである。 机上在庫の把握は、経営者、店長に最も要求されることであるが、実際には各ジャンル担当者が自分のジャンルの総冊数が何冊あるか把握して、毎月報告されたものを集計すれば店全体の商品在庫が計算上できるのである。担当者に商品回転率を意識づける最良の方法は、棚段数、商品在庫冊数を暗記させることである。こうした教育が徹底できれば、スペース生産性、商品生産性は自ずと向上するのである。

第5章
販売からみた数値
1雑誌の分析
 書店の売上げには分野別の構成比がある。その内容は売上規模、立地、業態等によって異なるが、共通する現象としては、雑誌売上げが一番大きいことである。つまり書店の中心商品は雑誌であり、書店の主食といわれるのはこのためである。 書店の商品構成に関心を示さない店主、書店人はいない。何が一番売れているか、今売れているものはなにか、何を売りたいかを、客層を分析して品揃えをしている。一例をあげれば、文庫が売れる、実用書が売れない、学参が伸びない、
新書が回復してきたなど、ジャンル別の売行き比が問題にされている。 棚の生産性を考えるために、ますますジャンル別売上比を意識し、何故売れないか、何故売れるのかを分析する動きは多くなっている。実際には平均的な分野別売上構成比が発表されているので、棚構成には参考になっている。売場規模の大きさに関係なく、雑誌売上げは構成比の中で1番高い。しかし書店人が気にするのは書籍の各部門の売上げであり、雑誌については、ただ雑誌という呼称でひとくくりにしてしまう。全体の売上げの30〜50%に及ぶ雑誌売上げの分析をしないで、僅か数%のジャンルについて目くじらをたてることは矛盾している。 売上げをあげるためには、大きな比率を占める雑誌部門を詳細に検討する必要がある。今後は、雑誌を細分化して、雑誌の中の各ジャンルを項目だてする時期である。書籍ジャンルと対等に考えてみる必要がある。 雑誌のジャンルは9項目に分けられる。即ち、1週刊誌、2児童・学生誌、3女性誌、4家庭誌、5大衆誌、6総合文芸誌、7趣味誌、8専門誌、9ムックである。 雑誌の種類は3500〜3700誌であるが、委託雑誌は1200〜1400誌である。従って書店店頭に並ぶ雑誌のアイテムは1200誌前後である。この
中でアイテムの多いジャンルは趣味誌であり、550誌前後である。趣味誌の内容は、モーター、音楽、スポーツ・釣り、旅、科学工作、カメラ美術、室内ゲーム、園芸に分かれる。 雑誌の売上げの中で、シェアの高いのもこの趣味誌である。アイテムの多いことに比例するわけであるが、商品管理の悪い店、定期改正のできていない書店では趣味誌が第1位に登場しない。これは管理の悪いバロメーターであって、早速、雑誌全体を点検する必要がある。 その様になる原因としては、一点当たりの冊数が少ないために、早く売り切れていることに気付かず、売りもらしをしているのである。地味な雑誌だけに、読者もさわぎたてず、店頭になければ他店で買ってしまうのである。専門誌に似ている面がある。固定読者がつけば、確実に部数は増加するのである。 3ケ日連続返品のない趣味誌、入荷3日以内に売れてしまう趣味誌は、要注意である。入荷部数が2部〜3部と少ない趣味誌の本は1度チェックしてみたい。 次に、各書店には必ず特色がある。女性客が多い、サラリーマンが多い、学生が多い等、それぞれに客層に変化がある。それに伴って雑誌の売れ筋も変化し、成績のよいジャンルは返品率も低い。 自店で、趣味誌に次いでどのジャンルが売れているのか把握する必要がある。毎月28日に大量に商品が入荷するので、自分の店は女性誌が売れていると思ったが、実際には児童誌の方が売れていることもある。女性誌、家庭誌、児童誌は連動する関係をもつ雑誌である。 週刊誌は季節性、緊急性が高い。即ち、7、8月と12月、正月は販売比率が上昇する。特に観光地、海岸、避暑地、スキー場周辺書店では、季節性を忘れると、大変な売上げ損をおこすことになる。国際間題、国内アクシデントによる緊急誌面は週刊誌の得意とするところである。ニュースキャッチと同時に緊急追加することが大切である。この傾向は芸能誌についてもいえることである。 郊外書店は、平均的にモーター誌、男性誌、趣味誌、大衆誌の販売シェアは高い。店長自身がこの傾向を把握しておれば定期改正をおろそかにすることはないが、この傾向を無視すると、売りもらしをおこす。反面、児童誌、学生誌は売れないのでしぽるべきである。 雑誌は委託であり、雑誌名は同じであっても毎月内容は新刊であるから、各書店が適正な仕入れをしないと返品が発生する。現在、取次のコンピューターシステムによって、雑誌は減少志向にあるから、書店自身が数値武装をしないと、雑誌売場はどんどん空いてしまう。気付いた時にはおそいのである。回復するまで3ケ月かかることを覚悟しなければならない。特にこの傾向は新規店に多く、警告を発したいと思う。 雑誌の面白さ、むずかしさは創刊号にある。チャレンジ精神を発揮して、大胆に仕入れ、完売した時の快感は格別なものである。版元の宣伝姿勢、書店の取組み姿勢が創刊号の売れゆきを左右することは当然である。 この傾向に似ているのが、増刊号、臨時号である。例えばオリンピック特集号は、日本選手の活躍、スター選手の出現の有無、記録の続出等によって人気の出具合がちがってくる。地元の選手が活躍すれば、当然その地域ではグラフは売れる。 ムックは書店に定着した商品である。すでに必備図書として雑誌台に、実用書棚におさまっている。料理、お菓子、お弁当、インテリアのムックは好評である。版元の強力な宣伝で一時的に売れるよりも、地味に長く売れてくれる商品の方が歓迎される。雑誌の中では高単価商品であるから、積極的に扱うべき商品群であるが、スペースをとるために自主的に仕入れをする書店は少ない。成績をあげている書店は必ず年に何回かムックフェアを実施している。積極仕入、店頭販売で売上げをあげている。ムックを売ろうとする意欲は高効率販売を志向していることであり、確実によい成果をおさめている。版元のバックアップのあることは言うまでもない。取次の送品だけで商売する書店と差がでるのは当然である。 雑誌の総売上げは書店総売上げの30〜50%であることは冒頭申しあげた。雑誌はトコロテン商品故に、ないがしろにされ易い。雑誌に強い書店には読者が集まるといわれる。情報を売る書店にとって雑誌はホット商品であり、読者の需要が端的に計れる商品なのである。従って科学的に管理すれば、限りなく売上げは伸び、限りなく返品率をゼロに近づけられる商品なのである。
2 雑誌の追跡分析(Y書店の販売事例から) 雑誌売上げの重要性はいうまでもない。売上げは客数×客単価であるから、不況になった時は買い控え、客数減に見舞われる。そこで集客力の強い雑誌に理解の深い書店になることが必要である。サンプル店を設け雑誌の分析を試み、いかにすれば雑誌売上げが向上するか考えてみたい。 サンプル店Y書店の最近6ケ月の販売実績をジャンル別に、次ページの表6に表示した。この表からいくつかの問題点が指摘できる。
1.7月の売上げが高い。これは7月に特別の販売キャンペーンを行ったためで
  ある。
2.雑誌シェアが全国平均より低く、コミックのシェアの高い店である。
3.実用書、児童書は全国平均より多く売る書店である。
4.セルビデオ他の全国平均の8.8%の数値に比べ、売上げが低い。

 サンプル店Y書店は客数の伸びが思うようにならず、販売成績も今一歩である。その原因は客層と品揃えがマッチしていないからであるという結論に達した。そこで客層調査をすることになり通行量調査、通行者調査、人店者調査を実施し、一方、雑誌の売上分析をすることが客筋調査に直結すると考え実施した。次ページの表7はY書店の8月号〜10月号の販売実績である。この表から特徴的なことを指摘してみたい。

 1.趣味誌の販売シェアが異常に高く、全体の25.4%を占めている。
 2.週刊誌5.9%のシェアは低いのではないか。
 3.女性誌、家庭誌を合計すると18.8%であり、趣味誌に次いで多い。

 趣味誌の販売冊数は他誌に比べ圧倒的に多い。特に10月号の趣味誌の販売シェアは46.4%とほぽ半数に近い。雑誌売場の中で、趣味誌は女性誌、家庭誌、児童誌に比べ平台の陳列は少ない。差しの多いことから考えて売場効率の高いジャンルといえる。 次にY書店の扱う趣味誌の売上分析を実施し、10ジャンルに分けられた趣味誌の中で何が売れているのか、店の傾向をつかんでゆきたい。 次ページの表8はY書店の趣味誌の売上分析である。扱い点数は617誌で、Y書店の雑誌総アイテム1766誌の34.9%に相当する。Y書店の扱い点数は少ないわけではない。その3分の1が趣味誌であることも驚きである。 次に趣味誌617誌の中で1番多いのはスポーツ・釣誌142誌(シェア23%)、2番目はモーター誌122誌 (19.8%) となっている。 Y書店の売上げのトップはモーター誌が32.7%を占めている。3ケ月間の売上冊数1232冊で、扱い点数122点で割ると、1誌平均冊数10.1冊となる。扱いシェアに比べて、販売シェアが高く、効率のよいことを示している。第2位の販売冊数はスポーツ・釣誌の15.3%である。 Y書店は客数の伸びが今1歩であることを自覚し、商品構成と読者ニ−ズの不一致が、店の不人気と考え雑誌の徹底分析を始めた。 その結果、趣味誌の異常な売れ方、特にモーター誌、スポーツ誌で趣味誌の48%を占めている。男性客が多いことがわかると同時に、趣味誌は平台を使用する頻度が少ないために、いつ品切れになったのかわかりにくい商品である。趣味誌は目的買いであるから、目ざす雑誌が必ず買える書店であれば、固定客はふえるはずである。モーター誌といってもFl、2輪、4輪、マニアック誌、新中、スポーツカー、中古車等分野は広い。 スポーツ誌然りである。ゴルフ、テニス、マリン、スキー サイクル、スカイスポーツ、ラグビー、相撲、フィッシュ、バレーボール、陸上、スキューバ等あり、どの雑誌が何冊入荷して何日間で売れているか、売れゆきの伸び率はどうであるか分析する必要がある。モーター誌、スポーツ誌の勢いのある雑誌は何であるのか、つきとめるべきである。 雑誌分析の結果を販売促進の切り口に使わない手はない。即ち客層の主力がわかったのであれば、ターゲットに合わせた書籍の分野を充実させ、催事を行えばよい。 読者は自然に増えるものではない。活気のある店、魅力のある店、トレンディーな店の要素が店内にあれば徐々に客数はふえるのである。書店の定点観測を行い、読者ニーズをたしかめ、商品構成をオーバーラップさせればよいのである。 雑誌は定期刊行物であるために数量評価がしやすい。従ってその変化によって読者の需要の変化を知ることが可能となるのである。顧客意識を強くもたなければ客数を伸ばす手だては生まれないのである。

3 交叉比率と商品回転率
 a交叉比率
 いかなる商品を仕入れるべきか、その基準を見出すために、商品回転率と粗利益率を掛け合わせた積の交叉比率がある。 A商品交叉比率=A商品回転率×A商品粗利益率

●商品を仕入れる基準の主なもの

 1.売上高基準 (売上高の大きい商品を選ぶ)
 2.直接経費基準 (販売経費のかからない商品を選ぶ)
 3.回転率基準(回転の早い商品を選ぶ)
 4.売上総利益基準
 5.粗利益基準 (粗利の大きい商品を選ぶ)

 この中でも、多くの場合は回転の早いもの、粗利益率の高いものを重視する傾向が強い、従って回転率も粗利益率も高い商品は第1順位で仕入れなければならないが、現実には回転率の高い商品は粗利益は低く、粗利益率の高い商品は売れ足の遅いのが普通である。 即ち、回転率と粗利益率の積は平均化される傾向にあるということである。さまざまな回転率とさまざまな粗利益率をもつ商品群のなかからどの商品を選定すべきか迷うときは、回転率と粗利益率の積が大きいものから仕入れようというのが交叉比率主義である。 たとえばA、B商品について次のページのようであったとき、どちらが有利であろうか。 直感的には粗利益率20%のA商品に食指が動き易いが、交叉比率を計算してみると、A=140、B=150となり、B商品のほうが利益への貢献度が高い
ことがわかる。 書店の正味体系は定価別正味と出版社別正味の2系統があり、固定的、硬直的であることはご承知の通りである。つまり仕入原価が決められ、販売価格は定価によっておさえられているために、サンドイッチの状態で粗利益率が決められているといえる。 従って書店の商品選択が商品回転率を中心とした回転率主義になるのは当然である。 書店の交叉比率は粗利益率が硬直的であるために大きな差を期待することはできない。とはいえ、業界の常識として専門書は高正味、実用書(含む地図・ガイド)、学参は低正味である。文庫は後発文庫は75掛と低正味である。学参の正味は西低東高であり、実用書は直取引主体の永岡書店は取次口銭分だけは確実に安いの
は当然である。代替性のきく実用書は競争の高いジャンルであるため、陳列競争、棚占有競争である。そのために実用書間の正味競争も激しい。報奨金合戦も露骨であるが、正味についても格差の激しいのは実用書である。因みに実用書の交叉比率を考えてみたい。 交叉比率を意識することは利益率アップを意識することであり、商品政策に変化を与えることになる。選択仕入、重点販売が交叉比率を拡大してゆくことにつながるのである。 交叉比率を指標にして商品構成の見直しと売上効率アップを考えるシステムが今必要である。

 b商品回転率
 年間ジャンル別売上高を棚平均在庫金額で割った数字を商品回転率という。商品の回転度合を見る指数で数字の高い方がよい。 分類別商品回転率は立地別に特色がある。 駅ビル・駅前店では文芸7.7回と断然他立地をひきはなし高回転である。ベストセラー、話題書は集客件の高い駅を中心に展開されることがわかる。コミック、文庫も高い。 商店街書店では児童書、実用書、新書の高回転が目立ち、女性客、特に母親層の来店が多いことが考えられる。専門書も商店街書店の特色である。専門書の陳列が大型書店に多いことのためである。 郊外店は総体的に商品回転率は低い。学参、ビジネス、専門書の2回転未満は目立つところである。郊外店が商品在庫をしぼる必要性がこのことからもわかる。

 回転率を向上させる方法には2通りある。

 1売場1坪あたり売上高をあげる
 2売場1坪あたり在庫高を少なくする


 この2方法をさらに徹底する仕方に2通りある。
 a本の売場面積を縮小する
b棚差し陳列を面陳列に変える、平台5冊積みを3冊積みに変更する

 前記の方法は消極的と見られるそしりはあるが、現実論として書店平均値に到達していない店は現状分析をして対応策を考えなければならない。 小さい売場より大きい売場の方がよいにきまっている。しかし地域には適正規模があり、その規模を超すと坪効率が急激に悪くなる。拡張を続けて大型書店になった店もあるが、常に坪効率とのたたかいであったはずである。拡げ続けても効率が低下しなかった現象は読者ニ−ズが存在したからである。しかし飽和点に到達すると坪効率は低下しはじめる。 過大面積の書店は最初から飽和点に達しているのであって、売場面積の縮小をはかり、適正度を考慮しなければならない。縮小は敗北、失敗ではなく効率化であり、同収増益の一方法なのである。 在庫を一番収容してしまうのは、倉庫、ストッカー、平台の順に多い。倉庫、
ストッカーの商品はお客様には見えない存在であるから、できれば在庫したくない。正月、ゴールデンウィーク、お盆休み、年末など物流の止まる時期、新学期クリスマスなど特定商品が大量に販売される時期のストックは必要であるが、それ以外はノーストック主義に徹するか、平台対応で販売する習慣をつけてゆきた 平台商品はその時期を代表する商品、そのジャンルを代表する商品である。しかし定番商品を除けば永久商品ではなく、時限商品であるから、いつ平台からはずすか商品のライフサイクルに敏感でなければならない。 商品回転率を向上させるためには、まず回転意識を強く持つことである。このためには棚担当者が自分の持ち分棚の総冊数が何冊であるかを知らなければならないことと、年間何冊売れているのかを把握していなければならない。正確には棚在庫金額と売上金額回阿転率が算出されるべさだが、冊数管理方式の方がわかり易い。

 例えば、新潮文庫在庫冊数、棚1000冊、平台200点各5冊=1000冊、合計2000冊。 売上1ケ月平均1500冊、年1万8000冊、従って回転率は9回転となる。これは冊数管理による回転率である。 各ジャンルの回転率を試算し、平均以下の商品群については、在庫商品の内容が悪いか、在庫が多すぎるかのどちらかである。必ず原因を追求して対処しなければ向上は望めない。一方、好回転ジャンルについても原因の究明を怠ってはならない。売場拡張か、在庫増か、平台増か、より一層の好回転材料を揃えてゆきたい。

第6章
出店の手順と数値
1どこで書店を開業するのがよいのか(立地調査・商圏調査)
2どのくらいの大きさの書店にしたらよいのか(店舗規模)
3どのくらいの資金が必要なのか(投資計画)
4出店しようとする書店はどれだけ儲かるのか(投資採算)
5どれだけ売らなければならないのか(損益分岐)
6いつ頃開店するのが望ましいのか(開店時期)
以上のことついて検討を加えた上で出店するのは当然である。次に内容について吟味してみよう。

1 立地調査・商圏調査
a立地調査
 商売をしようとする場所の通行量調査をしなければならない。市役所、商工会議所にデータが揃っていることが多いが、最近の資料は自分の手で行わなければ得られない。 市街地・市内であれば通行人の調査である。性別、年齢別、時間帯別、方向別曜日別 (平日と日祭日の2日実施のこと) が必要となる。 郊外地であれば通行車両の調査となる。乗用車・産業車別、時間帯別方向別曜日別調査である。

b商圏調査
 1人口調査
 出店予定地区の町名別の世帯数と人口(男女別)、年齢別人口、産業別人口、昼夜別人口を調査し、一覧性のものをつくる。この資料は市役所の広報課、統計課、総務課などにある。
 2商圏調査
市街地、市内出店であれば、出店予定地を中心に500メートル商圏(1次商圏)、1000メートル商圏(2次商圏)の同心円を描き、それぞれの人口を計算する。 その場合、川、鉄道線路、山、公園、大きな工場敷地などは商圏を分断するので、その点考慮して人口を計算することが肝要である。 郊外地であれば、1000メートル商圏(1次商圏)、2000メートル商圏(2次商圏)、4000メートル商圏(複合商圏)の同心円を描き、それぞれの人口を計算する。 市街地の徒歩商圏に対し、郊外地は車両商圏の違いがあるが、前項同様、川、鉄道線路、山、公園、大きな工場敷地などは商圏分断の要素になるので考慮に入れなければならない。 郊外他の場合は、同心円分布よりも、道路網沿いにアメーバ状に商圏が拡がるので、物件から道路沿いに10キロで算出することも必要となる。複合書店の場合は商圏が広くとれるからである。夜間、10キロの走行時間は10分前後であることを想定してほしい。

C競合店調査
売場面積、販売員数、営業日数、営業時間、商品構成、在庫状況、陳列方法、販促方法、兼業状態、付帯設備状態(駐車場、空調設備、トイレ、BGM、エレベーターなど) の調査をする。 至近距離書店、予想される競合書店については現状販売額、客数、重点商品、ジャンル、経営理念、人脈など総合的な調査が必要となる。 郊外店の場合は競合店の駐車台数、周辺に駐車場の拡大余地の有無ならびに台数、駐車場誘導のサイン看板の良否、営業時間の把握は大切である。 複合書店であれば、レンタルの価格、サービス、ビデオとCDどちらが主流か、ビデオの場合、洋画、邦画、アニメ、アダルトなどメインターゲットは何なのか、予想会員数はどのくらいか、その他複合商品を調査する必要がある。

2 店舗規模
 地域1番店の規模をもつことが理想であるが、採算性から逆算して決めるべきである。即ち、予想商圏の総書籍需要額の25%を獲得できる規模の店舗をつくるのが、目安である。

3 投資計画
a自社物件・50坪店舗の場合

1店舗建築工事費(本体・電気設備・給排水)
60万円/坪×50坪=3000万円
2什器・備品(書棚・カウンターの類)
20万円/坪×50坪=1000万円
3内装設備費(床・壁・天井・照明・外装・看板など)
15万円/坪×50坪=750万円
4商品代(書籍・雑誌)
55万円/坪×50坪=2750万円
5広告・宣伝(チラシ・広告代)
80万円
6雑費 (開店披露・文具など)
70万円
計   7650万円

bテナント出店・50坪店舗の場合
1保証金・権利金
90万円/坪×50坪=4500万円
2什器・備品 (書棚・カウンターの類)
20万円/坪×50坪=1000万円
3内装設備費(床・壁・天井・照明・外装・看板など)
15万円/坪×50坪=750万円
4商品代 (書籍・雑誌)
55万円/坪×50坪=2750万円
5広告・宣伝(チラシ・広告代)
80万円
6雑費 (開店披露・文房具など)
70万円
計   9150万円

4 投資採算
初年度     2年目
1売上高     1億800万円 1億2420万円
2売上粗利     2322万円    2670万円
3営業費 人件費  1328万円   1461万円

販売費 156万円 172万円
設備管理費   557万円     613万円
その他  2352万円   2589万円

4営業利益 △31万円 81万円

5 損益分岐 (必要売上高の計算)

a出店条件=自社物件
b投資金額=7650万円
c固定経費=2353万円
d変動費
扱い品  正味率   扱い率   計
雑誌  77.0%  60%  46.2%

1仕入原価率      77.6%
2販売および商品ロス率 1.0%
3合計変動率      78.6%
損益分岐点売上高
10995万円
年間必要売上高    1億995万円
月間必要売上高      916万円
1日必要売上高 30万円
〔初年度より借入元金(投資額の40%として)を返済するのに必要な売上高〕借入を3000万円、年額返済額300万円の10年返済として、税率45%とした場合の税引前利益は、352万円。したがって必要売上高は、
12、640万円
年間必要売上高 1億2640万円
月間必要売高       1053万円
1日必要売上高         35万円

6 開店時期
 投資をした以上、早く開業するにこしたことはないが、しかし書店営業には売れる月と売れない月があるので、できれば売れる月に開店した方がべターである。

 売れる月(売上指数は平均を100とする)
3月120.9% 4月115.3% 12日117.4%

 売れない月
2月 85.5%  9月 89.4% 10月 89.3%


第7章
報奨金はきちんと入金されているか

●報奨金の未入金

 書店の報奨金は営業外収入として計上される。書店経営指標 (日販) によれば、1982年から91年までの10年間営業外収入は最高1.62%、最低1.42%と大きな変動はない。報奨券は毎月お送り下さいとの版元からの要講は多く、強いが、報奨券整理の手間、人件費も馬鹿にならない。その上整理代は先払いで、報奨金入金は後日であり、しかも入金予定日は版元まかせで、至ってルーズな経理処理といわざるを得ない。入金請求をしなければそのままという版元もある。未入金版元は10〜15%は確実にある。外商の入金状態で10%以上がコゲつきであったら大変である。時間と労力と経費を掛けて送った報奨券がどう処理され入金に至っているか検討してみたい。雑収入の増益は経常利益をアップすることに関連する。報奨金が未入金になるケースは書店・版元双方に問題がある。

1 未入金−書店側の原因
 1報奨券の送りかたがまちまちである。送る月あり、送らない月ありでは困る。 送付指定日のある版元については厳守する。
 2整理の仕方が版元指定通りであるかどうか。文庫、新書文芸書等がごっちゃ になっていないか。
 3送り先が版元の指定通りであるかどうか。版元報奨券整理先住所を確認して、 そこに送るようにする。
 4版元から送られてくる報奨券受領証と書店送付台帳と突合する。受領証は2 年間は保管する。
 5書店は報奨券送付台帳(版元別、月次別)を必ずつけ、入金消しこみをする。 これは、それほどむずかしいことを書きたてたことではない。基本的なことであるから最低のルールとして守ってゆきたい。

2 未入金−出版社側の原因
1報奨券が送られてきたら、必ず「何日付分何枚受けとりました」の受領証を 発行する。
2送り先の間違っている書店には変更の通知をして、放置しない。
3何年度分処理の送金予定日、送金方法を連絡する。
4年間報奨券締め切り月並びに送金予定月を明らかにしておく。
5売上げカードと外商券(高額報奨券)を分離送付する時は、その旨を書店に 徹底する。

 前記、両者の問題点についてふれてみたが、これ以外にも双方に言い分はあるであろう。問題は後方事務であること、緊急性がないこと、読者が関係しないこと、双方相手まかせであること、送付・送金の期限が不明確の版元が多いこと等、が問題を不明朗なものにしているのである。 現状では、未入金版元は10〜15%に及ぶ。これは入金調査をして督促をした結果であるから、ノーチェックの書店入金率は更に低いことは確かである。
 以下この点についてふれてみたい。
 送付した報奨券が入金されたかどうか、書店は心ずチェックしなければならない。返品未入帳の調査と同様に突合事務がなされなければならない。未入帳突合には返品伝票という帳票があるが、報奨券入金突合に必要なものは、版元別、月別送付台帳である。ひらたく言えば、スリップ送付控えである。この控えがなければ、調査、督促は不可能である。もしないとすれば今月から早速作成していただきたい。伝票形式より、雑誌・書籍の送品事故処理帳様式の一覧できるノート形式がよい。
 この件の帳票については、『売上スリップ報奨券管理マニュアル』 (広島東販会青年部 TEL082−294−2011 ¥1200) の85〜143ページに詳述されてあるので参考にされたい。 入金未処理をチェックするためには版元別支払月をよく知ることである。表10に版元月別締切表を掲げておいた。 この表は各版元が年間でスリップを締め、コンクール入賞データ、配本ランク参考データ等に利用することが多い。このデータをもとにして、それから2ケ月後支払いという版元が多い。支払い月は各版元の決算月にからむために、まちまちである。従って書店としては締切月に集中的に送付して入金処理を待ち、未処理?ならば送付スリップ処理(入金) の照会をすればよい。 返品未入帳督促と同次元の意識が報奨金未入金にも必要である。人件費、処理コストがかかっているのであるから、回収に強い関心があって当然である。 版元によっては送付締切が年1度でなく、何回かのところがある。当然、支払いもそれに伴い年数回ある。

●年4回締切版元
西東社  1、 4、7、10月
婦人の友社 3/15、6/15、9/15、12/15
●年3回締切版元
日本放送出版協会 3、7、11月
●年2回締切版元
a2、8月  朝日ソノラマ
b3、9月 グラフ社 ナツメ社 みずうみ書房
c4、10月 広済堂出版
d5、11月 姉妹社
e6、12月 春陽堂書店、JICC出版局、成美堂出版、日東書院、日本文芸社、双葉社、有紀書       房、文芸春秋
f9、12/10 徳間書店
 締切が数回ある版元は、その分だけ入金処理も早いのでスリップ送付もやりがいを感ずるものである。 入金未処理でよくある例では、類似店名のある時は他店入金があるのである。類似店が他地区にできていないかどうか気をつけると同時に、取次、版元にたずねることも必要である。 報奨金未入金調査依頼の往復葉書をつくって督促するのが、手続きとして望ましい。 報奨金の整理のコツはためないことである。つまり定期的にスリップ整理をするシステムをつくることである。月初10日までに送付完了する書店が多い。 現在売上カードを報奨金制度の対象にしている出版社は277社ある。 日常、書店が取引のある出版社900社前後からみると、30.4%の出版社が書店報奨を実施していることになる。9年前に報奨金を出していた出版社は143社であったから、約、倍増したことになる。出版社の競争の激しさを感じる。 店頭で報奨カードの枚数が一番多く出るジャンルは文庫である。銘柄によって報奨金に差が出ている。低単価商品、低報奨金とは限らないのが文庫の報奨金である。

3 主要版元文庫報奨金(1枚)
5円
知的生き方文庫、マドンナメイト、フランス文庫
3円
朝日ソノラマ文庫、光文社文庫、祥伝社又庫、ちくま文庫、徳間文庫、福武文庫
2円
廣済堂文庫、新潮文庫、小公文庫、創元推理文庫、双葉文庫、文春文庫
1円
角川文庫、講談社文庫、河出文庫、集英社文庫、ハヤカワ文庫、PHP文庫
  (特約店のみ)、富士見文庫、カラーブックス
 書店の経営状態が苦しく、正味引下げ運動が熊本書店組合外から出されている。正味75掛運動は昭和25年から出されている問題で、その道程は長く、けわしい。版元はその一助として報奨金制度を設け、書店の販売援助に手をのべ、店売、外売策に気を配っている。店頭報奨券を効率的に整理し、完全回収して営業外収益を拡大したいものである。