書店の商品管理

 

ま え が き

日書連(日本書店組合連合会)はすでに40年の歴史をもっている。日書連の目的は「出版社、取次と緊密な連携を保持し、出版物小売業の発展改善を期すると共に、各組合相互の連絡協調を図ること」である。日書連の歴史を振り返ってみると、6つの大きな運動とその成果があった。1正味引き下げ運動、2運賃撤廃運動、3雑誌発売日問題、4「月1回支払制」の運動、5再販擁護運動、6返品減少対策運動であった。このように日書連の歴史は書店経営の合理化、近代化、民主化の歴史であった。2ケタ成長を続けてきた出版界も昭和50年代に入り1ケタ成長となり、特に56年以降は1%〜4%の低成長になった。その原因は、好調であった雑誌にかげりがみえ始め、その反動が返品の急増となって現れた。このために日書連は返品の無駄を省き、仕入の自主性、責任販売をはかり、書店の体質を強化し、商品管理を徹底することを目的として返品減少対策にとり組んだのである。日書連の足跡1〜5にくらべて、返品減少運動は、書店個々の自覚に基づく運動であって、日書連の上部組織の指導がいかに強力であっても運動は実を結はない。個々の書店が自店に適した方法によって運動を進めなければならない。総論を運動方針とすれば、各論は各書店の対策といえる。日書連のこれまでの書店の合理化、近代化運動によって、書店経営の基盤は確保された。これらの運動は総体的な闘争といってよいと思う。これにくらべて返品減少運動は内側にむけられる個別闘争である。自店の欠点を洗い出して、改善してゆくことがこの運動の中心である。

日書連では返品減少運動の手はじめとして昭和57年に雑誌に取り組みを始めた。書店の中心商品である雑誌については関心も高く、定期改正の徹底、発売日7日目調査による適正仕入の基準が定着し、雑誌返品減少運動は一応の成果をみた。そこで日書連は昭和60年に書籍の返品減少に取り組むことになった。すでに56年頃から書籍の返品率は40%を上回ることもあり、業界の危機感はつのる一方であった。すでに、書籍の過剰返品を憂えた書店はこの問題に取り組んでいた。適正仕入、適正在庫とは何かという研究であった。過剰送品に対するブレーキとしてパターンの修正が唱えられた。しかし残念ながら雑誌の定期改正が絶対修正であるのに対し、パターンの修正は相対修正であり、送品量の徴底的減量にはつながらない。従って、このままでは書籍の返品問題はどろ沼に入ったきりの状態ではないかと危惧する声が高まり、新しい切り口が求められた。それは書店における適正在庫の追求である。それ以上は在庫をもたない。さすれば返品も発生しないという論理である。その切り口は商品回転率から把握したジャンル別在庫冊数である。簡易な管理体制をとるために金額管理ではなく、各ジャンルの冊数管理にした。各ジャンルに期待する回転率から算出される冊数を把握し、それを適正在庫とし、それ以上には冊数を増やさない方法である。全国平均の書籍の回転率は3.7である。ジャンルは7ジャンルで十分である(大型店を除く)。文庫、児童書、実用書、文芸書、新書、参考書、その他(ビジネス・芸術・専門書) それぞれの回転率は各書店が決定すべきものである。回転率中心の冊数管理が急激にクローズアップされ、そこで問題化したのが書籍の商品管理であった。商品管理が最高の状態に行われた時に、商品回転率がどれだけ望めるか関心のあることである。少在庫主義は時流である。減量作戦をせねばならない。無駄な在庫、ロス在庫の発生は最も警戒しなければならない。この対策は商品管理の徹底以外にはない。

たまたま昭和60年6月に、日書連全国理事会の席で「書籍の商品管理」について話すチャンスを与えられ″商品管理に関する100の原則″を発表した。その後、日本書店大学から″商品管理″についてまとめるようにおはなしをいただいた。そこで″100の原則″に更に手を加えて出来上がったのが本書である。 本書作成に当たっては日本書店大学伊東賓千男専務に大変お世話になりました。感謝申し上げる次第です。

昭和61年10月                                        能 勢  仁



第1章 仕 入 れ

1 仕入れ過多をするな

2 仕入れの見込みちがいをなくせ

3 雑誌定期改正の励行

4 書籍ランク・パターンの修正の励行

5 事前発注主義の徹底

6 仕入時期を研究する

7 まめに少しずつ仕入れる

8 注文はためない

9 各1、各2の並列注文はよくない

10 懇意版元の情的仕入れ過多

11 雑誌第2号(創刊次号)の適正仕入

12 不必要商品の送品辞退

13 返品する位なら仕入れるな

14 返品の手間、資金を考えて禁欲仕入を

15 取次に返品実態を訴え、適正送品をお願いしよう

第2章 陳列・販売

16 上げ底陳列を考えよう

17 平台10冊の観念を捨てよう

18 手のとどかぬ所に陳列するな

19 破損・汚]損本は陳列するな

20 陳列期間の長すぎは返品につながる

21 ベストセラーの深追いはやめよう

22 時期がすぎたら平台冊数を減らす

23 季節外商品の追放運動

24 予約客の来店とどこおりへの対応

25 予約客の無届け休止への対応

26 客注品到着の即時連絡の励行

27 客注品の前受金の徹底

28 生きている商品だけを店に置こう

29 常備の取りすぎをしない

30 ポップ広告不足で売り損なっていないか

31 陳列場所は妥当であるか

32 売れ筋は店内に多重陳列せよ

33 規格外商品の陳列には注意

34 注文品は買切の意識で

35 買切商品の意識化

36 仕入れた商品に責任をもとう

37 販売データを活用しょう

38 倉庫をあてにしない陳列を

39 ストッカーを廃止してゆく運動の強化

40 店は広いと思うな、商品はもう置けない

41 売れる本を徴底的に売れば、返品率は下がる

第3章 商品管理

42 年度もの、年鑑類の徽底管理

43 流行商品から目をはなすな

44 巻数ものはきちんと揃えよ、特に上巻

45 商品カバーの汚れのないように

46 専門書のストックは控え目に

47 稀少出版社への特別配慮を

48 準常備は1冊でよい                                

49 専門棚、回転塔は在庫をふやすもと

50 定期的な商品管理の励行

51 商品の入荷違いの処理

52 客注品督促の2重入荷処理

53 客注流れ品の処理

54 他書店商品の混入処理

55 着荷時の取扱い不注意による破損本処理

56 委託教材商品に要注意

57 回転率の悪い本は注文でまかなえ

58 ストックは多品種にするな

59 雑誌の返品はデータ不足から生まれる

60 データによって雑誌返品は0に近づく

61 ストッカー、倉庫をあてにするな

62 店から遠い倉庫は無意味である

63 棚の整理整頓

64 荷捌き所の整理整頓

65 きれいな手で本を取り扱う

66 在庫過多は万引に狙われる

67 チェーン店間移動による商品ロスに注意

第4章 返   品

68 ためて返そうと思うな。1冊でも返せ

69 大手版元ほど返品はうるさい

70 新聞社系出版社も返品はきびしい

71 版元別返品難易度を研究せよ

72 出版社への返品交渉、往復ハガキを活用せよ

73 催事をしたら早めに返品せよ

74 催事品の返品もれに注意

75 多重陳列による返品もれ

76 定期的に返品する

77 雑誌の休・廃刊による返品もれ

78 版元の返品了解の確保と活用

79 出版社出張員の名刺を大切にせよ

80 臨時増刊の返品もれ

81 落丁、汚損本の即時返品励行

82 見本商品(実物)の返品もれ

83 伝票返品は2度見直せ

84 旧版本の返品の徹底

85 高額書籍は特に念入り返品を

86 豪華本の了解返品の徹底

87 判型を理解して返品しょう

88 返品ルールを守ろう

89 長期商品は事情により即返品

90 返品作業を遅滞させない

91 売上げ不振の時は返品で応えよ

92 返品は男女をとわず実施

93 返品と販売は両輪である

94 返品期限の厳守

95 返品から利益は生まれない

96 その1冊の返品が資金ぐりを助ける

97 有限売場に無限在庫は返品率を上げるだけ

第5章 逆 送 品

98 逆送出版社の再点検と研究

99 ねばり強く、版元への返品交渉

100逆送商品の取扱いの徹底

* ☆書店をとりまく本のリストあとがき

 

第1章 仕 入 れ

1 仕入れ過多をするな

販売は仕入れに始まる。従って販売意欲が旺盛であれは仕入れに示す関心は高い。それでは仕入れの基準は何であるのか。販売予想冊数は過去の類似商品、同一著者、出版傾向から判断して決定される。例えば渡辺淳一の小説であれば、自分の店では100部は過去の実績からみて売れる自信がある。この場合、割り出される仕入予定部数の販売期間はどの位であるのか。2週間〜1ケ月でみたい。

さて、書籍は発売されてみないと売れゆきがわからない。仕入れと販売予想が合致しないと大量返品を生むことになる。そこで売れるだろう仕入れほ慎まねばならない。あくまでデータ仕入れでなけれはならない。だろう仕入れと同時に山かけ仕入れもいけない。仕入れは適正仕入れが望ましいわけで、著者別、版元別、ジャンル別商品回転率を基準として仕入れすべきである。

2 仕入れの見込みちがいをなくせ

見込みちがいをおこすケースは、類似商品が非常に売れたので、この商品も売れるだろうと思ったが全く売れなかった場合と、売れに売れて面くらう場合の2つである。仕入れ過多、仕入れ不足いずれも見込みちがいは仕入担当者としては失格である。しかし何回かこうした失敗を経験しないと仕入れの技術は向上しない。仕入れの成功は運ではない。過去の販売データ、これからの堅冗の見通しの上に立って仕入れ部数が決定される。根拠のある数字でなけばならない。見込みちがいは反省する心、チェックする心がないと改善されない。仕入れの軌道修正は他人に教わるものではなく、担当者が行うものである。商品を比較することに興味をもつことは、見込みちがいを直す方法である。仕入れは机上だけでは絶対にだめである。

3 雑誌定期改正の励行

雑誌は人気がでてくると、販売部数が急激に伸びる。売れゆき不振雑誌については、返品冊数の増加ですぐに判るが、売れゆき好調雑誌については、発売後3日目、5日目、7日目等の調査をすることによってはじめて仕入部数の不足を発見する。雑誌は定期刊行物であるから、販売可能部数がつかめれば、計画販売ができる。仕入・販売・売れゆき調査・定期改正の繰り返しによって雑誌は限りなく伸び、限りなく返品0に近づいてゆく。雑誌はエンドレスな商品であるから、定期改正もその都度でなければならない。まとめたり、ためて定期改正をすることは雑誌の、サイクルの短い商品特性を理解しないことになる。定期増にせよ、減にせよ、きめ細かに実施することが売り上げ増、返品減につながることになる。創刊雑誌については、広告、特集等に注意し、早目の定期改正が必要である。

4 書籍ランク・パターンの修正の励行

1年間に出る新刊の点数は3万点〜3万4千点である。1日に約100点である。これほど多い新刊の交通整理はコンピューターが行っている。これがパターン配本である。希望ジャンル、希望出版社にあらかじめ希望部数を自己申告するのがパターン配本の基本的な作業である。雑誌の定期改正は既成事実の修正であり、絶対修正であるのに対し、書籍のランク修正は、今後の仕入れに対する修正であり、相対修正である。

書籍の発行形態は単行本形式が多い。また委託期間が3ケ月ということで販売期間は長い。そのために書籍1点1点に関心を示すことは不可能である。そこであらかじめ配本予定部数をランクによって覚えさせ送本させるのが現在の方法である。売行きの好不調に応じランクの修正が必要である。修正に10日〜20日かかるのに注意すること。修正後は改正されているかチェックする必要がある。

5 事前発注主義の徹底

書店は立地する場所・経営方針によっておのずから読者対象がしぼられてくる。その読者群のニーズに対応して商品構成、商品仕入をしなければならない。ビジネス街書店であれば当然ビジネス書は1本の柱である。この他に志向する柱があれば、2本目の柱として育ててゆかねばならない。商売に先手必勝の原則があるように、仕入も待ちの姿勢では良い商品は入荷しない。入手した出版情報を駆使して、版元に発売以前に注文を出す。この際注文0の商品もあるかもしれない。しかし0も注文である認識を担当者はもたなければならない。毎月送られてくる新刊案内に対して、毎月事前発注するところに意味がある。継続が大切である。また発注期限の厳守も重要な要素である。おくれて出される注文は、事前発注にはならない。追加注文と同じである。

6 仕入時期を研究する

良い販売実績を残すためには、良い仕入れが要求される。しかるに良い仕入れとは何か。質、量、時期が問われる。ここでは時期について考えたい。一般的にとられる仕入時期は事前仕入れである。出版情報を参考に仕入部数を決定し事前に発注しておく方法である。この仕入部数が少なければ追加仕入れとなる。初回配本で売れゆき部数がまかなえれば追加注文は発生しない。つまり一般論としては発売前、発売直後、更に販売継続発注と3つの時期が考えられる。 特殊な仕入時期として、季節商品の季節外仕入れがある。例えば百人一首、カルタ、自由日記等を夏に仕入れ販売する。この際の必要条件としてはまとまった部数である。従って友邦書店と連帯すれば可能になる。仕入時期をずらすことによって有利な取引条件で仕入れることができる。しかしこの取引によって生じる資金負担は延べ勘、長期清算によって解決してゆき度い。

7 まめに少しずつ仕入れる

仕入れはまとめて一度に注文をだす仕事ではない。従って毎日の心遭いが大切である。或る新興スーパーが書籍部を新設した。書籍は雑貨部に属していたので、雑貨担当のバイヤーが仕入れをすることになった。雑貨はメーカーが週一遍本部にやってきてバイヤーと交渉して仕入れ数を決めるので、書籍の仕入れもこれにならって週一度まとめてスリップを取次に渡したという。これでは機会損失をおこすことは甚だしい。ライフサイクルの短い商品ほど仕入間隔を短くせねばならない。仕入れは溜めないこと、一冊でも必要とあらは即刻注文すべきであって、翌日にまわしてはならない。書店の競争力は早さであるから、これに対応する注文姿勢が問われる。折角経費をかけて仕入れた商品が時期を逸したために返品になったのでは経費の無駄づかいである。

8 注文はためない

注文をためてしまうと注文品は一度に到着する。店売のきく店は土・日が忙しいが、その土曜日の午後に大量に注文品が入荷すると、段取りに戸惑うことがある。金曜日に入荷していれば土・日の販売に間に合い、売り上げに貢献するのだが、土曜日入荷では棚出しが月曜日になることもある。機会損失をしたことになる。仕入れは計画的に、組織的に考えることである。遠隔地では郵送注文もあろう。ポストの集配時間の研究は是非やっていただきたい。最近はファックス利用が盛んである。取次は勿論、出版社のファックスの備えつけは益々盛んである。緊急・正確を要する時、自店にファックスがなくても、コピー同様、ファックス代行店から送る方法もある。遠隔地書店の注文はファックスの方が正確・安全・確実、そしてスピーディだと思う。これからはファックス代行は流行ると思う。

9 各1、各2の並列注文はよくない

版元のセールスマンから、一覧性の注文カタログを提示されて、各1冊注文をして、取次番線印を押している風景を見かける。営業マンがわが社の商品は回転が早いし、御店も繁盛店だから2冊は必要でしょうと、上手い口車に乗せられて各2冊の並列注文をしてしまうと、さて着荷してから棚に入らなかったり、予想に反し回転が悪く、1冊ずつはストック入りになる。もとを正せば並列注文がいけないので、平均的に商品が売れるはずがない。売れゆき良好なもの、普通、やや落ちる、全く売れない商品と売れ足に差があって不思議でない。従って注文する際、この商品は2冊、この商品は1冊、これは0と商品回転にあわせて注文すベきである。営業マンのセールストークに耳を傾けながら、凸凹注文をして、自分の注文意志をはっきりと伝えてもらいたい。

10 懇意版元の情的仕入れ過多

書店を定期的に訪問する出版社は多い。販売促進、情報交換を目的にして営業マンが書店を訪問するうちに次第に人間関係が深まり、個人づき合いが生まれることもある。こうした同志的結合の中で商談がはじまれば、人情としてなれ合いになりがちである。これが禁物である。つき合いとビジネスは割り切らなければならない。懇意、人情はビジネスとは別の感情であって、仕入れ、注文に当たっては数字、情報に基づいて行うのが道理である。書店として当社の仕入れ姿勢を示すことが大切である。勇気のいる場合もあるが、一度きり出せばあとはわかってくれるはずである。理解できるだけの親交があるからである。背伸びをしない仕入れが、版元・書店に結局は良い結果をもたらす。それが理解できぬ版元は自分の利害だけを追求する売上至上主義の版元であって、書店にメリットをもたらす版元ではない。 

11 雑誌第2号(創刊次号)の適正仕入

毎年雑誌の創刊がめざましい。因みに1985年250点、84年267点、83年257点、82年181点と止まるところを知らない。創刊に当たって版元は大々的に宣伝し、その反応が店頭に表れるのは事実である。創刊雑誌がでることは類似雑誌と競争関係に入ることで、先発雑誌は食われる。しかし創刊に当たっては巨額な宣伝費をかけるが、次号の広告量は激減する。従って固定読者の定着していない創刊誌の2号3号は苦労する。創刊誌並みに売れる例は稀である。殆どといってよいほど、定着するまで下降線をたどる。書店は初回入部数に注目し、どの位の数字に落着くか推移を見守らねばならない。実売数の把握、定期数、店売数、何日目で売り切れたか、どんな人に買われたか、評判、自分でも目を通すことによって必要部数を決定し定期改正をしないと返品作業だけが残って、創刊誌が売上げ要因にならなくなってしまう。

12 不必要商品の送品辞退

計画仕入、計画堅冗は商人が最も志向するところであるが、取次サイドで商品が送られてくる場合がある。書籍では長期委託である。企画商品、季節商品、時事商品等それぞれセット組に意味をもたせてあるが、送品時期が選択できないために陳列に至らず返品の浮き目をみる。店にとっては不必要商品となる。自己申告、申込による長期以外は送品を辞退した方が良い。雑誌ではムックのセット組み、コミックの季節送り、実用吾がらみのセットが不必要商品になることがある。販促を目的とした送りであるが、店頭在庫と重複するため返品となる。教育教材品は周辺商品故、二次商品として扱われる。常設陳列でないことが多いので、版元、取次志向で自動送品されると迷惑する。しかし時代は変化し活字メディア以外にニーズが高まっているからその点吟味し、必要商品、量を申告して、その埠は不必要なことを早く連絡すべきである。

13 返品する位なら仕入れるな

返品の原因には大別して2つある。1つは見込み違いによる返品であり、いま1つは追加注文のミスによるものである。ここでは後者について考えてみる。問題になるのは追加注文の時期と数量である。特に注文時期が適切でないと返品になる。責任販売が強調されている昨今、新刊が委託で配本されたとしても追加注文は売り切るだけの数量を発注すべきである。タレントもの、時事ものは売れゆき期間の持続の把握がむずかしい。ベストセラーになる決め手は持続性である。線香花火ではだめである。従って売れているからといって統計に基づかない仕入れは危険である。数量は出ていてもまとめ買いがある。裾野の広がりのない例である。下降線の兆しのある時は発注せぬ方が賢明である。また、仕入れた以上は売り尽くす努力を忘れてはならない。仕入れにこの意気ごみがなかったら仕入れの資格はない。

14 返品の手間、資金を考えて禁欲仕入を

書店の経費の中で、一番ウェイトの高いのは人件費である。ところが書店の仕事をみると雑用が多い。その中でも返品作業にとられる時間は多い。委託制度の落とし子といわれる返品は少ないに越したことはない。その返品の元凶は仕入過多・仕入放任である。返品は堅冗とは正反対の仕事であって非生産業務である。しかし返品業務を怠ると老廃物が滞留して健康を害してしまう。早く処理しなければならない。

仕入れがあれは支払が発生する。無駄な仕入れは資金ぐりをくるわすもとである。仕入れイコール支払いを社員全体に徹底できれば、仕入過多にはならない。しかも仕入れ過多は恒常的になる性格をもっている。常々仕入れをひきしめる姿勢が禁欲仕入れであって、ケチ仕入れではない。

15 取次に返品実態を訴え、適正送品をお願いしよう

取次に返品実態を訴え、適正送品をお願いしよう。取引月報に雑誌・書籍の返品率の昨年対比がのっている。この数字によって自店の販売の実力がわかる。書店主には適量書籍送品量、雑誌送品量の考えがあるはずである。従って予想以上の請求額に対しては後悔があり、資金繰りの悪化だけが残る。ここで大事なことは請求内容を分析することである。もし新刊委託の返品率が異状に高いとすれば、新刊配本のランクが販売実績にあっていない証拠である。早速、配本表を取り寄せ修正をする必要がある。長期委託商品の請求金額にも注目したい。版元、取次の企画商品が、自店のマーケットに合っていればよいが、少しでもずれていると返品率を上昇させる。雑誌は書店売上げのベースであるが、最寄り商品故に日々の定期改正が必要である。雑誌にはスリップが入っていない故、机上で販売感覚をつかむのは無理である。雑誌棚でつかむべきである。

 

第2章 陳 列・販 売

16 上げ底陳列を考えよう

平台販売は大量販売の一手法である。しかし大量仕入、大量販売が成功しないときには大量返品の浮目を見る。また、平台販売に慣れっこになると仕入数が多い。例えば平台は6冊、棚さしは2冊と仕入基準が高くなり恒常化して在庫冊数が急激にふえてしまう。特に、雑高書低の時代に、果たして平台に10冊必要かという疑問が涌く。答えはノーである。ここで考えたいのが雛段陳列・上げ底陳列である。この方法によって在庫は半減し資金繰りを良くする。こうした陳列上の工夫はどんどんとり入れるべきで、例えば鏡を使って店を広く見せる方法、面陳列を多くして表紙の華麗さを強調し、かつ豊富感を出すなどである。特に面映列は、在庫が減って売上げが増す二重効果がある。

17 平台10冊の観念を捨てよう

この観念は高度成長経済時代のなごりであって、今の時代にはそぐわない。仕入れ単位の切り下げ運動である。良く売れていた店ほど平台10冊の観念は強い。先輩の仕入れ単位を目で見ている後輩は、自分も自然と10冊単位で発注してしまう。委託制の一番怖いところで、売れ残れば返品すればよいさという気持ちが頭のどこかにあると、平台仕入れが10冊になってしまう。しかし今は時代が違う。売れないことと、ライフサイクルが短くなってきていることと、第3に流通パイプが太く短くなってきている。このことから10冊はオーバー仕入れである。学3のようにオールシーズン平台という商品もあるが、最盛期は10冊以上、ピークを越した後は5冊、閑散期2冊と時期に応じて平台冊数を変化させ売り上げは絶対に落とさない工夫をしなければならない。なんでも減らせばよいというのではない。基準が必要である。

18 手のとどかぬ所に陳列するな

書店の壁面棚は7段か8段が多い。身長160センチの人が8段目の本をとろうとすると苦痛である。棚の前に荷物でもあると、もうとれない。特に女性は背伸びは得意でないから、高い所の本はつい取らずじまいということになる。書店の側からすれば1冊売り損ったことになる。そこで書店では、物理的に高い棚は廃止する。全部7段にして、8段以上の棚にはベニヤ板をはるか、ポスターを貼るなどして陳列棚として使わぬことである。棚の前に踏み台の置いてあるのをみるが、利用しているのは書店人であって、お客様が踏み台にのって高い棚の本をとっている風景には余り出くわしたことはない。踏み台は自己満足の代物であって実用性は殆どない。本はお客様の手のとどく範囲内に陳列すべきである。

19 破損・汚損本は陳列するな

書店の商品は展示見本であると同時に、販売品でもある。従って販売に耐えられないような汚れた本、ケースのこわれた商品が店頭に並んでいたのでは困る。つまり店頭商品はすべて即売商品でなければならない。コミックをビニールに入れて販売する書店が主流になったが、これは立読み防止策もあるが、綺麗な本を販売することが主目的である。取次から送本されてくる時点で本が破損していることがある。ケース入りの本の角が破拐する例が多い。雑誌では部厚い雑誌、紙質の良いファッション誌など、荷おろしの時、放り出されると雑誌の背中がいたんでしまう。ファッション誌は特に取扱いが慎重でなければならない。書籍・雑誌共、破損・汚拐本は店頭から一掃したい。汚れた本に関心をもつ様になれば、店内から汚拐本・破拐本は駆逐されるであろう。

20 陳列期間の長すぎは返品につながる

年間3万点以上でる新刊で書棚はうめつくされる。限られた陳列面積に、限りない量の新刊が押し寄せるから、各新刊に割り当てられる場所、期間は年々きびしくなっている。実績のある著者、テーマ、出版社は優遇されるが、無名著者、無名出版社、新テーマによる出版物の扱いは一定していない。陳列期間が問題である。最近の傾向として委託期間一杯に陳列することは少なく、早めに陳列を変えてゆく方法がとられる。読者が書店に変化と発見を求めているので、長期陳列は読者志向に合わないのか? そこで陳列の見切りの基準を決める必要がある。例えば1週間に1冊も売れない場合は棚さしにする。Aゾーンの平台は週3冊以上の売れゆきの本に限るなどの方法である。売れない本を長く陳列することは商品回転率を低下させることであり、返品を増すだけである。

21 ベストセラーの深追いはやめよう

堅冗には必ずピークがある。話題にのばっている間は売れゆきが持続されるが、話題が他に移ったり、強力なライバルが現れると売れゆきは急激におちる。こうした激しい変化をおこすベストセラーは気がつき易いが、まだ売れる売れると思っていたベストセラーが、気がついてみたら1ケ月に数冊しか売れなかった例がよくある。取次発表、業界紙発表のベストセラーを注目することは書店として必須の仕事であるが、それにつられて仕入をしても全く売れないことがある。同一地区書店、近隣書店の方が、同じベストセラー報告でも同時性は高い。ただし爆発的に売れた感覚にとらわれて夢を見てしまうと、ついベストセラーを長く追いかけることになる。見切りをつける勇気を養ってゆきたい。ベストセラーの10位〜20位あたりの商品は注目に価する。入荷も容易であり、書店の販売意欲次第で売れゆきを増すことができる。

22 時期がすぎたら平台冊数を減らす

平台は目立ち易い陳列方法である。従って平台に並べられている本は、書店で力を入れている商品といえる。量販店で店頭にうず高く積み上げた目玉商品と同じであって、重点販売商品である。書店には短期的に売れるベストセラーと、長期的に売れるロングセラーがある。どちらも売上構成の中で重要部分を占める。ABC分析に見られる通り、在庫品20%の商品で全売上の80%を占める。この定判商品は強力商品である。書店では季節性の強い商品ほど売上貢献度も高いが、反面不発の時もある。売れる商品に対する配慮として平台冊数に変化をつける方法がある。年中同じ在庫冊数であることは合理的ではない。販売の峠をこしたら平台の冊数を減らす習慣は定着させなければならない。具体的に何の平台は何日までと決めることが肝要である0平台に変化がなくなった時は販売がマンネリ化した証拠である。

23 季節外商品の追放運動

悪い例をいくつか挙げてみよう。3学期に1学期のドリルが陳列されてある、旧指導要領による参考書が売られている、リスマス向き児童書が1月に並べられている、すでに放映を終わったNHK大河ドラマの小説、シナリオがまだ売られている、税制が改正されたのに旧法による税法規集が並んでいる、前年度六法全書が陳列されている等、枚挙にいとまのないほど書店には季節はずれの商品が並んでいることがある。この陳列風景は違和感を通りこして滑梧ささえ感じさせる。読者の目からみれば、この書店何をやっているんだという気になるであろう。返品もれ、陳列替え忘れにせよ、季節商品にはことの外注意を払う必要がある。季節商品の仕入れは販売ピークの3〜4ケ月前であり、販売時期はピーク月の3ケ月前から始まる。仕入・販売に気をとられて季節終了後の処置を忘れてはならない。

24 予約者の来店とどこおりへの対応

雑誌の定期読者、書籍の全集・叢書の予約者で店頭にとりに見える読者がいる。予約を承った数ケ月はきちんと取り・に来てくれた読者が、務馴染みになってくると商品が滞貨するようになる。特に買切りの専門雑誌、中でも医学・看護雑誌の滞貨は書店泣かせとなる。とどこおる原因としては海外出張、単身赴任、病気、族行、引越し等本人の周辺に変化がおこったからである。こうしたとどこおりに早く気づいて処置せぬと予約品はすべて死蔵品となってしまう。書店から読者への連絡は電話が多い。電話は文書よりも即効性がある。予約客の来店が不可能な場合にはお届け、宅急使という方法もある。読者がとりに来られない理由がわかったならば、以後の定期の有無を確かめる必要がある。敷居の高くなっている読者の心を考慮して、暖かい気持ちで応接しょう。

25 予約者の無届け休止への対応

書店にとって予約客は売上げが確保された読者であって有難いお客様である。書店の固定読者であり、顧客名簿に登録されるお客様である。従って書店には予約著名簿があり、読者の住所、電話番号、勤務先が記録されている。ところがお得意様だと考えていたお客様が、何ケ月か来店されないので、何ケ月分かの雑誌、書籍がたまってしまった。早速、連絡をとってみると予約は取り消してくれという申し出である。事前連絡なしに一方的な通告である。買切雑誌のバックナンバーはロスになる可能性が高いので、予約の責任性を強調して、在庫分についてはお引取りをお願いすべきである。と同時に定期改正を至急して次号よりの送本をストップさせなければならない。店頭来店客の予約は連絡を密にとっていないと、一方的に、また無断で自動休止になる場合があるので注意しなければならない。

26 客注品到着の即時連絡の励行

店売中心の書店では、客注商品が到着した時には電話連絡をするのが普通である。読者の心理としては読みたい時が買いたい時であるから、注文品の到着は一刻も早く知らせる必要がある。長く待たせることは店の信用の低下並びにキャンセルにつながるからである。書店業界では商品競争が不可能であるから、クイックサービスが読者に対する良いサービスといえる。電話連絡は留守のことがあるので自宅と勤務先の両方の番号を記録し、第一希望がどちらか、また通話可能な時間帯もメモしておいた方が便利である。不在の場合には言付けを依頼するよりも、メモで本の注文品の到着を連絡して下さいと頼むべきである。面倒なことは仲介者には重荷であるから、できるだけ簡単なメモで、よい遵格を心掛けたいものである。〃本が届きました。○○書店です″シンプルの見本だが、これでも充分用は足りる。

27 客注品の前受金の徹底

客注商品は緊急性と正確さが要求される。読者が本を必要とする度合が強く、一刻も早く手にしたいのである。しかし本が到着し連絡したところ不用になったといわれることがある。これはオーダーメイドの洋服をいらなくなったと言われるのと同じである。これは読者の甘え、我が儀、無知、であって、書店がそのまま引きさがることに問題がある。読者を自由放任にさせるだけである。このトラブルをおこさせない一方法として前受金制度がある。客注流れがあっても実害はない(しかし前金制が徴底されていない。その理由は、前金をいただくとお客様が強くなる、入荷がおそい時困るといったことである。注文に自信をもち接客販売に誇りをもてば、一般読者も注文読者も何等変わらない。特にいけないのは注文客が前金を払うというのに受けとらぬ受注態度である。前金をいただくことに慣れようではないか。

28 生きている商品だけを店に置こう

棚卸しで勘定される在庫金額は、手持ち在庫が全部売れたと仮定しての金額である。つまり店内に不良商品がないということである。しかし実際には、最上段の棚、店の奥の棚などに棚晒しの本があるのに出くわす。所謂、ショタレといわれる本である。売れない本、時季はずれの本、年おくれの年亀などは店にあっても何の価値も無い。棚ふさぎに過ぎないのである。ショタレは商品管理の・不徴底によって出来る。ショタレの出ぬように心掛ける努力が販売管理に必要なことである。死に新商品が1冊もないことが理想であって、そのためには常に読者ニーズの変化、地域社会の状態を把握していなければならない。読者対応の上手な書店にお客様は多く集まり、情報も得られる。この結果、商品回転率もあがり、在庫商品が活性化され、生きた商品の多い書店になることができる。

29 常備の取りすぎをしない

毎年、年末になると慣例の常備申込がある。前年度常備一覧と照らし合わせて、新規常備を申込むのが普通である。申込の基準は、商品回転率である。売れゆきの悪い常備商品は翌年には切られる運命にある。判で押したように毎年同じ常備を申込む書店があるが、実際には常備商品の売れゆきは年々変化しているので、常備出版社1社1社の回転率を調査した上で申込むのが望ましい。書籍の平均回転率が3.7回転であるから、専門書以外の商品は3.7回転が期待できる常備を選ぶべきである。専門書は2回転前後が期待値である。売れない常備は動脈硬化現象をおこし、棚の魅力を失わせる原因となる。常備寄託は他人資本の利用と考ぇて常備を取りすぎると、書店に新鮮さがなくなる。1つのメドとして、一竺常備、つまり30坪の書店は30社、50坪は50社位の常備で良いのではないだろうか。

30 ポップ広告不足で売り損なっていないか

ポップ広告は無言のセールスマンといわれる。店内を賑賑しくする役割と同時に、販売促進の効果があるので商店では欠かせない道具である。読者の50〜60%の人は本を手にとって買っている。商品の陳列をひきたたせるポップが出されていれは、注目率は増し、手に取って見るチャンスも多くなる。これは自然と販売促進に結びついてくる。品切れポスターによる販促もある。〃只今○○品切れです。○月上旬入荷します〃と書いておけば立派な販促ポップである。ただ品切れ中と書くと、単なる出版情報にとどまり、本を買ってみようという気にはならない。図書券は3、4、12月がよく売れる。ポップ広告を出すことによって贈物を喚起させることもできる。話題書、売りたい本、催事、お知らせには絶対ポップ広告は必要である。

31 陳列場所は妥当であるか

書店の陳列はジャンル別に構成されている。その本の所属ジャンルがわからない時には目次、前書き、著者略歴等を読めば見当はつく。みすず書房、晶文社、サイマル出版会等の本は陳列にまようことが多い。主題の把握がむずかしいからである。専門書はスリップの坊主の部分にジャンル名が書きこまれているので陳列の時助かる。間違って陳列すると、本と読者の出会いは無くなり、チャンスロスを作ったことになる。ヘアカタログといっても最近は男性ものも出版されている。意識して陳列しないと女性の中に入れてしまい、これでは売れない。コンピューター関係の雑誌は趣味・専門に並べられることが多いが、経営雑誌の周辺でもよく売れる。陳列には関連性が大事であるから、学際商品、業際商品については二重陳列することも考えなければならない。

32 売れ筋は店内に多重陳列せよ

売れ筋商品は大量に仕入れることが多い。長期陳列、多量陳列が大量販売に結びついている。できれば多重陳列も必要である。本来の陳列場所の他に、店頭陳列しておいた方が販売チャンスは生まれてくる。また売れ筋商品は目が離せない一面をもっている商品である。うっかりすると、在庫をもちながら店内で切らせてしまうことがあるからである。地元市街地図はそのよい例である。売れ筋商品を多くもっている書店は繁盛店である。週単位でみて、確実に何冊売れるのか、商品の年間積み上げは大きい。毎日・毎週コンスタントに売れる商品の発見に努めることが、売上げを増すことにつながることを意識すべきである。

33 規格外商品の陳列には注意

大判の本、小型の本は陳列泣かせである。大きすぎて棚に入らなければ、本の置き方を変えるか、陳列場所が少し離れた所にゆくかもしれない。この結果、販売チャンスがそがれてしまったり、返品もれすることが多くなるなど、規格外商

品は不利である。 規格外商品を一ケ所にまとめる方法もある。規格外商品は写真集、児童絵本、建築書、美術書等に多いが、それぞれのジャンルの近くにまとめて陳列するのが望ましい。小型本についてはレジ周辺、所謂日のとどく所に置くのが良い。特に子どももの、価格の高いもの (例えはジェム辞書)は万引誘発商品であるから、万引き出来難い所に置くのが陳列の常道である。規格外書籍は一般書の棚では奥行きが浅くて、棚から落ち易いことがある。棚にベニヤ板を敷いて奥行きを深くしてやれば、本は前に倒れてこない。

34 注文品は買切の意識で

客注品であれ、店売補充商品であれ、注文の形で入荷した本は買切商品であることを銘記する必要がある。すでに日書連でも議論された所であるが、新刊配本時に委託条件で送本されてきた本の補充注文は委託期間内はすべて委託であって、返品は可能であるということである。結果的には返品可能であって、注文で取り寄せても委託条件の延長商品ということになるが、仕入れ意識としては買切でないと返品率の低下は望めない。表現を変えれば、禁欲仕入れを書店が心掛けないと、出版界全体の書籍の返品減少は実らないのである。出版社のA商品は初回委託配本で出荷されても、補充注文商品として出荷されても、A商品として同じであるから、例え返品されてもその区別はつかない。しかしこの仕入れ姿勢では無駄、不合理を内在させることになり、利益率を悪化させるだけである。

35 買切商品の意識化

雑誌の『婦人の友』を店頭に平積みする書店は少ないと思う。これは店頭で消化できる『婦人の友』 の冊数を書店が知っているからである。安全な形で商売をする方法として、書店では買切雑誌は定期予約の形にする。書店は確実に商品を確保する義務が発生する。『世界』然り、『家庭画報』然りである。買切意識はショタレ意識であり、社長、店長が特に強く持つ意識といわれる。これではいけない。しかしこの責任は社長、店長にある。社員、部下に対する教育の不徹底が買切の危機感、逼迫感をおこさせないのである。日常から買切商品に対する商品管理をきびしく教育すればショタレは発生しない。この教育が効を奏すれば、買切商品は良質読者、高額読者の発掘に非常に役立つ商品に変化し、売り上げ増に結びつくようになる。

36 仕入れた商品に責任をもとう

責任販売制が言われているが、他業界では買切り制が建前であるので、仕入れた商品を売り切るのは当然である。衣料品、文具、ファンシー商品、食料品等いずれも販売期間を考えて仕入量を決定し、いつまでに売り尽くすかメドをたてている。衣料品のように冬物、夏物と季節にはっきり左右される商品は残すことはできない。ファッション商品、キャラクター商品は特に時季に敏感である。従ってバーゲンセールを実施して、原価を切っても売ってしまう。本は委託制、再販商品故バーゲソはない。買切りに慣れていない業界であるから、売り切る量の研究が不足している。残る量に敏感でないからだ。返品できるシステムが残本に対する危機感、罪悪感をもたせないのである。売りつくすことを前提にして仕入量を決定する習慣を書店業界も身につける時期に来ている。

37 販売データを活用しよう

経験による仕入、販売は合理的ではない。その理由は商品の多様化、ライフサイクルの短期化などによる。販売データをとることによって自分の店の特色を発見することもできる。書店に3馬鹿がある。スリップバカ、巻数バカ、統計バカである。一生懸命売上統計はとるが、販売に活用されていないことが統計バカである。データを為っていながら宝のもちぐされである。データは活用しなければ単なる数字の羅列にすぎない。データは再生産のための調査であって活用されなければデータをとる意味がない。販売上の方向性や蓄積は長年のデータの分析の結果である。例えば小中学生市場の店と思っていたのが、実際には高校マーケットであることもある。データの活用は1人でするより、多人数で活用した方が応用範囲は広くなる。社長、店長は勿論だが、担当者が活用することが1番である。

38 倉庫をあてにしない陳列を

商品を大量に仕入れてしまうと、店頭陳列分と倉庫ストック分にわけられる。この仕入れの原因が、海外招待、高額報償金等、目の前にぶらさげられた人3にまどわされて仕入れたものでなかったかどうか。仕入れが先行してしまって仕入れと販売のバランスが失われてくると、資金繰りが怪しくなり、返品率だけが上昇してくる。最近では一時期に集中して売れる大量販売は少なくなった。従って大量仕入れの必要性も薄れてきた。倉庫の存在感がない。倉庫は定期的な大量納品に備えるための基地である。現在、書店で大量納品が考えられるのは教科書位であろう。倉庫を必要とする時、一時的に倉庫を借りた方が経済的である。倉庫が店売の補完的役割を果たす時代は終わった。それは量販店の無倉庫をみればわかる。流通の合理化でカバーしているのである。

39 ストッカーを廃止してゆく運動の強化

店売を助ける役目をしているのがストック商品である。新刊、売れゆき良好書、ロングセラー等、棚・平台の陳列だけでは品切れをおこしやすい商品についてのみストックとして保有している。ところが最近は取次の出荷態勢が整い、注文してから着荷するまでの日数が短縮された。注文方法も電話は勿論、ファクシミリ、コンピューターによる自動発注等24時間態勢である。手持ち在庫をそれほどもたなくても不自由をしない時代になりつつあると同時に、購買パターンも、1商品に集中する傾向が減ってきた。ストック不要の時代になりつつある。僅かに年末年始と新学期の一時季だけストックを持てば販売上支障はきたさない。乗車率の悪いローカル線の廃止同様、店内ストッカーの不必要部分は使えないように固定した方が良い。

40 店は広いと思うな、商品はもう置けない

大は大なり、小は小なりに売場の狭さを嘆くものである。その原因は書店がスペース産業だからである。現在流通している35万点の本を1点ずつ置くとして700坪は必要、その上毎年3万点以上でる新刊に対応するためには毎年60坪ずつ増床しなければならない。我々はお客様の、現在1番需要のある部分だけを店頭に置いている。それは新刊であり、ロングセラーである。従って″俺の店は狭いなあ″と思った時は陳列に工夫が足り無い時だと思えばよい。反対に、広いからこの位は置けるだろうと考えた時は無駄な商品の仕入をしている時である。返品の仕事を作るだけである。店の広さはお客様のために用意されたものであり、無用な在庫のためではない。売場の効率を常に頭に入れておくべきである。営業マンに、お宅は広いからと言われた時は注文を出さない位の効率意識をもって欲しい。

41 売れる本を徹底的に売れば、返品率は下がる

返品率は全返品金額を全送品金額でわった数字である。したがって実売金額が高くなれば返品金額が低くなり、返品率は低下する。売上も伸ばしたい、返品率もさげたいとなると、売れる商品を徹底的に売って実売金額をあげる方法が近道である。売れる商品即ベストセラーではない。欲しい本が、欲しい時に、欲しい量だけあったらと誰しも考える。それをかなえてくれるのは雑誌である。雑誌が書店の基本であり、主食といわれる所以である。20坪未満の店で、雑誌の売上構成比が50%に未たない場合は、雑誌を徹底的に売っていないと断言できる。売りもらし、定期改正のとどこおり、主要雑誌の調査不足が原因と考えられる。書籍についても、売れゆき良好書はベストセラーだけに限らない。当店独自のロングセラーを発掘すればよい。

第3章 商 品 管 理

42 年度もの、年鑑類の徹底管理

書籍の委託期間が3〜4ケ月であるのに対し、年鑑、年度版出版物は販売期間は1年間である。次年度の商品が発刊されるまでは最新刊であるからだ。うっかりするとこれにつられて長期間陳列をして、その挙句逆送という憂き目をみる。美術年鑑などは絵画ブームなので常時置き度い書店が多いのではないか。短期間の原画即売会には注文で取り寄せていたのでは会期中に間に合わない。版元の立場になれば旧年度版は反故であるから、全部売り切ってしまいたい。従って時期はずれに返品されては困る言い分である。必要であれば注文でとって欲しいという出版社もある。ケースパイケースであるから長期陳列可能な商品と返品期限厳守の商品をはっきりと分けて対応する必要がある。読者を思う販売意欲があれば、理解してくれる出版社もあるはずである。

43 流行商品から目をはなすな

書店の商品を大分類すると基本商品、季節商品、地域商品、流行商品、開発商品である。この中、流行商品は書店の花形の商品である。ベストセラーをはじめ話題の本が流行商品に当たる。ファッション商品ともキャラクター商品とも心えるので流行の終わりが気になる。新しい話題が生まれれば前の話題は忘れられる。商売で1番恐ろしいのはこの点である。花形であるうちはちやほやされるが、落ち目になってくると声もかけない。出版業界でいえば仕入・販売・急転直下返品となる。テレビ化、映画化されるとその作品は話題になり流行商品となる。一般的にはテレビ化商品の方が映画化商品より寿命が長い。早く情報をキャッチして仕入れるコツと同時に、降り坂になる時期にあわせてベストセラーの深追いにならぬょう注意する意識が大切である。8分目仕入れが大量返品を発生させないコツである。

44巻数ものはきちんと揃えよ、特に上巻

商品管理が徴底しているかどうかは巻数ものの棚を見ればわかる。源氏物語上中下巻、万葉の秀歌上下巻等揃っていないと意味のなくなる出版物は多くある。しかし書店の棚で上巻、第1巻の欠けた全集、巻数ものが多い。お客様にたずねられて始めて欠本に気づくのである。日常棚の整理をしていながら欠本を見過ごしていたのである。最初の巻数が欠本であると、残りの巻数の商品回転が低下するのは当然である。これは明らかな機会ロスである。回転のよい上巻、第1巻は2冊ずつ陳列する配慮が必要である。『徳川家康』『まんが日本の歴史』は全巻揃いで売れる。売れゆき良好シーズンにはセットで在庫する販促精神も大切である。セット買いの特典である化粧ケース付きを、商品棚にPOPすれば、反応を示す読者もあるであろう。巻数ものの読者は、頻繁に足を運んでくれる有難い読者なのである。

45 商品カバーの汚れのないように

書店の商品はどれも見本というものはない。みな展示見本兼即売品であるから、きれいな商品でなけれはならない。また一面からみれば本は選択商品であるから、立ち読みをしていてもお断りするわけにはいかない。選択中かもしれない。店頭で選択されているうちに汚れてしまう本もある。次に、買いに見えたお客様は汚れた本では買わない。代わりの本はありませんかと質問される。こうした時、普段から商品の美化に気をつけておけばよかったと思っても後の祭りである。店頭商品は常に正札通りに売れるにふさわしい新品の商品でなけれはならない。もし汚れたらふき取る、消しゴムで消す、カバーを取り替える等商品をいたわる気持が欲しい。客待ち時間に本をタオルで拭くシーンは見ていても美しいものである。商品を大事に扱う商人は、お客様も大事に扱うものである。

46 専門書のストックは控え目に

ストックをもつことは商品の品切れを防ぐためで、商品回転の良い本に対して行われるものである。書店の扱い商品の中で1番商品回転率の悪いのは専門書である。一般的に2回転前後である。中には1.5回転しかしない本もある。しかし専門書の中でも『理科年表』『天文年鑑』『5体字類』『建築基準法』…‥等々の本は回転が良い。資格試験、実用書的な専門書はよく回転するが、理論書、基礎的な本はすっかり売れなくなった。専門書は総じて回転の遅い商品であるから棚陳列が多い。資格試験のシーズンには棚から平台に陳列が変わり、需要に応えることになる。従って日常的には専門書のストックは在庫過多につながることが多い。専門書は注文体制を万全にして読者ニーズに応えてゆけばよい。専門書目録の完備とロングセラーの充実をはかってゆき度い。

47 稀少出版社への特別配慮を

逆送品の内容を分析してみると、大手版元の商品か、余り聞いたことのなし出版社の商品である。返品時期に商品の抜き出しをする際、無名版元の商品はもらし易い。多品種の中に陳列されると目立たないのが無名版元の商品である。従って新刊到着時に稀少出版社商品に対する特別な配慮をする必要も生じてくるかもしれない。例えば地方、小出版社の出版物は1ケ所にまとめて陳列する方法をとるとか、送品伝票上に陳列場所をメモしておく方法などである。稀少出版社の本の配本は1冊か2冊である。また広告宣伝も殆どなされない状態だから、例え内容の良い本であっても読者の手元まで届かないことが多い。この辺の事情を補うことの出来るのは書店の愛情ある陳列しかないであろう。兎角、小出版社に不利にできている出版界の仕組みであるから、小出版社を育てる仕事も書店の一役割ではないかと思う。

48 準常備は1冊でよい

常備商品が書店に並べられてから、それ以後に出版された新刊商品を準常備として組込むシステムは定着してきている。準常備システムとしてはいくつかの方法がある。1準常備カードが送られてくる。2準常備の申込書が送られてくる。3準常備商品が送られてくる。いずれの場合であっても、新刊商品の長期陳列が狙いであって、その見返りとして常備入替えの時に返品して結構ですというものである。読者は新刊には敏感であるから、発売当初は動きの良い商品が多い。しかし時間の経過と共に動きは鈍くなる。従って準常備として長期陳列するのは棚に1冊でよいと考えられる。常備商品が書棚に多くなると商品の硬直化現象がおこり、読者に新鮮さを与えることができなくなる。常備入れ替え時に、準常備商品の回転率がどうであったか、カードをいちいち抜いて調べることも、準常備の是非を論ずるのに大事な作業である。

49 専用棚、回転塔は在庫をふやすもと

既存の書棚以外に、あとから取り付けられた棚をよく見かける。これは出版社営業マンの販促に応じた結果であって、最近は出版社専用ラックが多い。店内のちょっとしたスペースを利用したもので、つい気を許してOKを出してしまう。この他に多いのが回転塔である。通路、店頭、棚の前など一見空間と見える所を狙って、置かせて下さいと交渉にくる。棚よりも商品回転のよいこと、売上げ増に貢献するなどいわれて、つい置いてしまう。しかし″ただ程高いものはない″のであって、結果は在庫過多である。出版社は専用棚、専用塔を理由に定期的に商品を送りこんでくる。出版社の出先在庫を引き受けたことになる。本当に必要とする専用棚であれば、店内レイアウトにふさわしい場所に、ふさわしい大きさで作るべきである。これならば邪魔にもならず、関連棚として置かれた商品が生きてくるからである。

50 定期的な商品管理の励行

商売で1番恐ろしいのは慣れである。商売に進歩がなくなり、自己満足に陥り易い。停滞から退歩に転落し、その時点で回復剤を打っても時間と手間がかかる。商売に危機感、逼迫感がなくなった時にこうした現象がおこる。常にチェックをすることが大事である。プラン・ドウ・チェックの繰り返しが商売であるともいえる。定期的な商品管理はチェックに相当する。書店の棚卸しは年1回か2回が多い。コンビニエンス・ストアでは毎月行っているが、書店も坪在庫を40万円以内におさえる少在庫主義に徴すればできるのではないか。月次損益がだせるようにしたいものである。例えば1月日記・手帳、3月学年雑誌、5月辞書・学3、7月課題図書、8月文庫、9月雑誌全般、10月実用書、11月常備申込のチェックと毎月重点テーマをもって仕入・販売・返品・商品管理の反省をすれば、ロスは相当防げるはずである。

51 商品の入荷違いの処理

新刊、補充を問わず入荷違いはある。あってはならないことであるが、人のやることであるからある程度は仕方ないにしても、肝心なことは品違いのあとの処理の問題である。書店の荒利益は薄いから、処理を怠ったり、誤るとますます利益は薄くなる。入荷違いを早く申告することがまず第1条件である。金額の大小に関係なく早く取次に連絡することである。次に間違った商品を返し、正しい商品を一刻も早く送ってもらうことである。第3に重要なことは返品した商品が確実に入帳されたかどうかを確認することである。書店が儲からない大半の原因は未入帳にあると言って過言ではない。この作業を励行するために記録をとっておくことが重要である。事故帳を1冊作り日付、書名、版元、冊数、金額、扱者、備考等を設けて、必ずノートに記録して取次に渡す習慣が大事である。

52 客注品督促のl1重入荷処理

客注商品は書店の扱い商品の中で最も神経をつかう商品である。読者にとっては一刻も早く読みたい本であるから、督促を受けることも多い。注文方法として、電話注文(1出版社直接、2取次担当者)、短冊注文、ファックス注文があるが、3週間過ぎて到着しない場合は事故の可能性が強い。読者にとっては″読みたい時が買いたい時″であって、いわんや注文品となれば来るのが待遠しい。そこで督促となる。督促を受けた書店は電話を中心に注文後の足どりを調査することになる。書店は責任を感じ大至急出荷を願う。これが二重入荷になる原因である。入荷違い商品の処理同様、早期処理と記録を残し、入帳処理が確実になされたかチェックすることが大切である。客注商品は専門的な本であることが多い。店頭で売り切るには不向きな商品である。従って処理を誤るとショタレになる可能性が強い商品である。

53 客注流れ品の処理

書店のロスの発生源の有力なものに客注流れ品がある。流れる理由は色々ある。商品到着がおそいことが理由の大半である。その次に多いのが注文主が取りに来ないことである。その他、不要になった、他所の書店で買った等である。時間が大部経過してから客注流れであることに気づくことがある。しかしこれは客注棚の商品の引取率に無関心であったために起こったことで書店側にも責任はある。オーダーメイドの洋服を例にとれば、本の注文品もその人にしか合わないのであるから、注文客に是非買って欲しい。実際には書店の泣き寝入りが多いのは問題である。書店の安易感が読者の甘え、我が儀を助長していることに気づくべきである。利益率を悪くしないためにも注文に対する責任を考えてもらいたい。注文を前金制にするのも防衛策の1つである。

54 他書店商品の混入処理

同じ番線、近隣書店の商品が混入して入荷することがある。ということは自店の商品が他書店に混入していることも意味する。商品の過着・不着に対してどう処理したらよいか。2つの重要な問題点がある。1つは事故の単位が大きいことである。1冊・2冊の不着・過着もあるが、ダンボール丸々1ケ分事故ということがある。第2は取次の発送事故ではなく運送会社の配送事故として処理されることがある。この場合、書店−取次の関係でなく、書店−運送会社−取次の関係となり、運送会社の事故証明がなければ入帳にならない。事故金額が大きいために事故処理を誤ると大きなロスとなる。過着・不着の申告は金額の大小に関係はない。事実をそのまま申告することが信頼関係を生む。従って損をした、得をした意識をもっているうちは真の商人ではない。

55 着荷時の取扱い不注意による破損本姓理

書店の午前中は忙しい。解荷、開梱に追われるからだ。しかし残念なことに、時々商品の破損がある。雑誌・書籍とも、束、ダソボールを投げることによって破損をおこすのが殆どである。書店に到着する前に積荷の時点で傷んでいるものもある。破損本であっては新着であっても商品にはならない。買切商品、少部数商品は早速取次に連絡をとり、入荷手続きと入帳依頼をする必要がある。商品交換は現在の流通機構では存在しない。赤・黒伝票で処理するのが今の取次の方法である。商品不足の時には運送会社が弁償に絡むことがあるが、商品破損に関知しないのは不合理な気がしてならない。破損本は交換すれば済む問題ではない。お客様にかかる迷惑や、不良商品を作ってしまった責任を感じなければならない。

56 委託教材商品に要注意

書店のメイン商品は雑誌であり、書籍である。取次からは雑誌・書籍の他に教育用品、教材商品が送られてくる。取次の扱い商品は想像以上に幅広く、書店に関係のある文化関連商品は殆んど扱っている。テープ、カセット、ゲーム、レコード、トランプ等色々ある。書店は雑誌・書籍については陳列場所を用意してあるが、突然送られてくる教材商品にはとまどうことが多い。憬列方法と商品管理に注意を払わないとロス商品にしてしまう。書籍売上げの不振なこの頃では、音と映像商品は時代要請として注目しなければいけない。本以外の商品を扱うことに慣れる必要がある。読者層の拡大と客単価の引き上げに役立つ商品群であるから。本と板本的に違うことは説明商品であることと、アフターサービスが派生することである。本は売り放しであるが、教材品は売った後もお客様と対話のできる楽しい商品である。

57 回転率の悪い本は注文でまかなえ

現在、書店が志向していることは効率主義である。人の生産性、商品の生産性、スペースの生産性を高めることに集約されている。中でも商品構成については回転率の良い本を中心に考えられている。従ってABC分析でいうBC商品が書店店頭から消えつつあるのは事実である。どこの書店にいっても同じ本しか並んでないという苦情が遠くから聞こえてくる。この苦情に応え、読者の撥嫌を取るのは注文受けに積極的になることである。金太郎飴書店の多い昨今では、注文受けの上手なことが書店の特色になる。無在庫であっても、目録・索引・出版情報で読者の注文に十分対応できる。商品知識は読者がつけてくれる不思議な性格がある。注文は書店を育てるメッセージである。無店舗・無在庫の書店が現れるのも遠いことではない。

58 ストックは多品種にするな

ストックの本質は少品種大量である。特に倉庫に納められる商品はなおさらである。書店では文庫・コミック・辞書・学参がストック商品の常連である。ストック場所は近いことが原則であって、棚の下のストッカーのことが多い。ところがこのストッカーで気をつけねばならぬことがある。それはストッカーの中の商品が多品種大量になっていることがよくあるからである。この状態ではストックとはいえない。店頭の棚と何等変わらない。この場合は一遍在庫整理をした方がよい。返品可能商品であれば総返品をして、改めて少品種にストックをとった方がよい。ストックは目をはなすと多品種になり易い性質をもっている。この性質を店長も担当者も承知していないと、目に見えない所で在庫過多となり資金繰りを悪くする。書店における氷山現象は知らないうちにはじまるのである。

59 雑誌の返品はデータ不足から生まれる

日書連で雑誌の返品減少運動をおこして一応の成果をおさめた。この運動の究極の目的はいかにしたら雑誌の返品率が下がるかということであった。運動中、2つの蹄著な動きがあった。第1は定期改正の徴底であり、第2は発売7日日の売れゆき調査であった。第1と第2の問題は相互に関係するものであった。つまり発売後7日日の調査で実売率が90%以上であれば品不足、85%〜75%であれは適正、70%以下の売れゆきでは返品が出る基準が設定された。この基準は書店にとって福音値であった。ここで出された結果を定期改正に反映し、部数を増やす雑誌、減数する雑誌が決定されたわけである。雑誌は売上調査をして科学的に管理すれば、返品率は限りなく0%に近づいてゆく。雑誌の返品率が高いことは調査不足を証明しているようなもので、書店の恥である。

60 データによって雑誌返品は0に近づく

一書店の雑誌の扱い点数は少ない店で900点、多い店で1300点位である。単純にみて1日30〜40点の入れ替えをしていることになる。各書店で毎月50部以上販売する雑誌、70部以上、100部以上実売している雑誌が何点ずつあるかご存知だろうか。りぼん、別冊マーガレット、きょうの料理、基礎英語などは相当売っているのではないか。書店ではデータ管理の重要性が認識されるようになった。書店から無駄を省く(返品減少)一方、売りもらしに気づいて増売に結びつく定期改正は一石二鳥の結果であった。主要雑誌紛200点の売上げ比率は90%前後に及ぶ、全体の4分の1の雑誌を調査するだけで返品率は大きく下がる可能性がある。売上調査→定期改正→売上調査をくりかえしてゆけば、雑誌の返品率はどんどん下がり限りなく0に近づいてゆく。

61 ストツカー、倉庫をあてにするな

書店の戦場は店頭である。店頭は読者とのコミュニケーションの場である。書店の宿命は多品種少量販売である。ややもすると多品種ということは広い売場を必要とし、且つ多くのストックを持たなければ商売ができないと思われがちである。こうした感覚をもった書店主は、広い倉庫と多くのストッカーを持ってしまう。しかし実際の書店経営はこれと正反対である。できることなら無店舗・無在庫が理想である。経費をかけずに、少ない在庫で商売することをつきつめると無店舗無在庫商法に到達する。これは理想であって、これに近づこうとするならば少在庫志向でなければならない。ストッカー・倉庫は在庫を増やすだけの役割で、在庫減に逆行するものである。効率の高い商売をするためには、管理のし易い店舗で一元的陳列が良い。

62 店から遠い倉庫は無意味である 

店から遠い駐車場が不便であるように、店から遠い倉庫は経営上良くない。倉庫はやはり店の近くにあってはじめて補充枚能を果たすものである。店頭商品を補う役目が倉庫であるから、常に店頭と倉庫は密接な連携がとられなければいけない。遠い場合には色々と不都合が生じる。店頭の欠本商品が判っていても、倉庫が遠いためにすぐに欠本補充ができない。時によっては、倉庫にありながら取次に注文を出してしまうこともある。在庫過多と無駄な仕入をしてしまう不合理も生まれてくる。書店は次第に倉庫をもつ業種ではなくなりつつある。これは第3次産業全体についていえることである。倉庫管理に要する人件費、保険、倉敷料、在庫商品資金等、経営を重装備にしてしまうのが倉庫である。近代経営は軽装備志向でなければならないため、倉庫は時代にそぐわない商業施設になりつつある。                        

63 棚の整理整碩

コンビニエンス・ストアが急激に成長している原因は、1便利性、2営業時間の長いこと、3親しみ易さ、4清潔さ、5鰐買習慣である。中でも重要視されていることはキープクリーンの精神であって、店内をいつも明るくきれいに保つことである。この施策は商品管理をし易くすることに直接結びついている。在庫過多は一目瞭然であり、不良在庫発見も簡単にできる。整理整頓がゆきとどいているため万引も発見し易く、品減りも防げる。この点、書店も大いに学ぶべき所が多い。棚が雑然としていたり、目一杯に商品が陳列されていると、本が本をかくす悪い現象がおこる。ゆとりのある陳列の方が本も発見し易く、商品管理も十分できる。減量作戦が商品管理には肝要である。その商品管理の基本は、店内、棚の整理整頓に尽きる。日常の心掛けが整理整頓を持続させるのである。

64 荷捌き所の整理整頓

家庭に台所があるように、書店の台所は荷捌き所である。台所には包丁、俎、ガス、水道等調理に必要な道具、施設がある。書店では荷捌き所の施設をもつ店ともたぬ店があるが、しかし荷捌きは必ずどこかで行われる。つまり荷捌き場所はどこの書店にもあって、そこにはカッター、鋏、ひも、輪ごむ、筆記用具、返品用具、伝票類、台車等々、きまった場所にきまった道具が置かれていないと、書店の荷受け業務が機能しないようになっている。美味しい料理も整った台所から生まれるのであって、書店も限られた時間内に品出しするためには整理された荷捌き所でなければならない。店内を台所にしている書店であるほどこの感は強い。売り場と荷捌き場の2つの顔を同時に使い分ける器用さは整理整頓からしか生まれてこない。目に見えない部分だけに地味な部分だが枢要な場所といえる。

65 きれいな手で本を取り扱う

以前にオーム社の常備商品をあけるとダンボールの中から真白な手袋がでてきた。手袋には手紙が添えられてあって、常備入れ替えに対する感謝の文面と共に、この手袋をお手伝いさせて下さいといった心のこもったものであった。なにか、じ−んとするものがあり、前年度常備品にご苦労さまでしたとつぶやいてしまう。愛情は人間同様、商品にもそそぐべきであって、それはやがてお客様に通ずる。返品作業の時はとかく、商品扱いが本から物に転じていないだろうか。食料品を扱う気持ちと同じ位に清潔感には気を配った方がよい。商品を大事にする気持ちが、いつしか評判になり、あの書店はいつもきれいで気持ちがょいということになる。台所ほ毎日使う所である。毎日整頓がゆきとどかねばならない。家庭の台所は奥さんが中心だが、書店の台所は誰でも入る。それだけに台所内のルールはみなで守らなければならない。

66 在庫過多は万引に狙われる

″本が本を邪魔する″ことがある。本が多すぎると、多い本のために売れる本もかくれてしまって売り損いをおこすことである。商品が多くなってくると書棚は目一杯に陳列されるために、本を抜き出す時、本自身を傷つけてしまう。また陳列できなくなると書棚の本と棚の問に横に置くようになり陳列もきたなくなる。中でも1番恐ろしいことは、陳列がだんだん高くなり、店内に死角をつくるようになる。店の奥にうず高く積んだり、在庫過多は店内環境を破壊する元凶である。ここに万引に狙われるすきができてくる。レジから店内の見通しがきかなくなり、社員の配置もままならなくなると、万引には恰好の書店となってしまう。万引は1度味をしめると2度3度となり、書店の受けるダメージは大である。在庫過多は早期退治が大切である。悪い虫がつかぬうちにである。

67 チェーン店間移動による商品ロスに注意

チェーン店経営をする書店では商品の移動をチェーン店間で行う。A店で品切れの商品がB店では大量に残っている場合、商品移動をすることはA店、B店にとってメリットのあることである。チェーン店経営の利点であり、妙味でもある。 商品移動で肝心なことはタイミングと速さである。タイミングを失すると移動は意味がなくなる。それのみか移動に用した費用が無駄になる。次に早さであるが、配送担当者のいないチェーン店の場合、店長同士の話で行う時はおくれがちになる。これは機会ロスをおこしていることである。また移動が完了しても売場に陳列されなければ意味がない。チェーン問移動は相互の理解が十分でないと無駄をおこす。店から店への移動ではなく、売場から売場への移動がチェーン問移動である。

第4章 返  品

68 ためて返そうと思うな。1冊でも返せ

返品商品はすでに商品価値を失った物体であるが、返品をすることによって換金される物体である。本の形をしたお金が返品作業場に散らかっているのである。これは返品商品に限らず倉庫・ストックにある本はみな同じで、商品の散乱はお金の散乱と考えなけれはいけない。ストック商品と返品商品の相違点は、返品商品は利益を生まない商品ということである。特に雑誌は最新号が出たことによって換金価値はあるものの、書店にある限りは紙屑と同じである。1日も早く返品し入帳処理しなければいけない。まとめて返品することは、その期間お金を寝かせてあるのと同じである。早期返品、早期入帳を心掛け、請求金額を1円でも少なくするよう努めるべきである。社長だけがわかっていても無意味で、社員に対しことあるごとに入帳、返品、無駄な在庫について教育する必要がある。

69 大手版元ほど返品はうるさい

大手版元の販売事務処理は殆どコンピューター処理である。従って返品期限もインプットされたデータで処理されるために、私情をさしはさむ余地はない。非情なままに処理されるために、逆送品の中に占める大手版元の比率は高い。販売実績も高いが逆送品も多いのでは利益は生まれてこない。ロス管理の時代に、初歩的なミスでショタレを作ることは許されない。返品期限を守る、担当者に承認をもらえるだけの人間関係を作っておくこと、商品交換に応じてもらう方法など活路はある。正面からまず話してみることである。逆送梱包のまま置くことは1番いけない。臆することなく、熱意を披浬すれば必ず道は開かれるはずである。常日頃から、大手版元と販売を通じてパイプを敷設して置くことが肝要なことである。

70 新聞社系出版社も返品はきびしい

大手版元と並んで新聞社系出版社も返品はきびしい。広告は自社媒体をつかってお手のものであるから、ゆきとどく。書店にとって読者を店頭に送りこんでくれるのと同じであるから大変有難い。販売の援護射撃には感謝せねばならぬが、いざ返品となると融通がきかない。これは新聞社系出版社独特の体質によるものである。新聞社の中の一独立採算部門として出版局、出版部があるが、人事面は独立していない。特に出版局上層部は他部門からの横すべりが多く、全くの素人も珍しくない。尚かつ数年間のお務めとなれば無難に過ごすことしか考えない。すべての出版局とは言わぬが、その反動が返品条件のきびしさに現れてくる。新聞社系出版社は図体が大きいために実体がつかみにくい。とかく書店が受け身になり易いが、受け身のうちは書店は伸びない。相手の図体を忘れてふところに飛びこめは、案外道が開けるかもしれない。

71 版元別返品難易度を研究せよ

書店は返品をするために商売をしているのではない。販売して利益をあげるために商売しているが、結果として返品がある。業界制度として返品が認められ、その返品システムに波長を合わせている。しかし絢4,200社の出版社の返品対応度は皆異なる。『出版社営業ガイド』(新文化通信社刊・1985年)によれば私の調査509社中、完全完切制をとっている社は僅か8社である。大部分の出版社は何らかの形で返品に対して話し合いの余地がある。例えば商品交換、歩安入帳、返品受領箋の発行など救済の道は十分ある。客注流れ、書名違いによるショタレ化に福音である。版元別返品承認著名簿は絶対作るべきである。返品の時だけ版元に電話をするのでなく、景気のよい注文も電話でしたいものである。相手の心がつかめれば販売・返品の両輪はうまく噛みあう。『出版社営業ガイド』を参考にして難易度を考えよう。

72 出版社への返品交渉、往復ハガキを活用せよ

返品OKを了解してくれるのは出版社であるが、書店が当面返品するのは取次である。この辺に問題がある。取次の販売には馴染みがあっても、返品管理部門は殆ど面識がない。従って節の通った返品をして逆送された時など煮え湯をのまされた思いをする。返品部門担当者は枚械的に処理しただけであろう。書店と取次販売は太いパイプで結ばれているが、書店と返品担当との間にはパイプもレールもない。そこで版元に了解を仰いで、これを文書化し返品商品に付ける仕組みが生まれた。これが返品承諾書の往復ハガキである。自店で用意するもので特別に雛型はない。地域書店組合で作成して組合員にわける方法もある。返品は販売の結果であるから、返品の後は又、再生産あるのみである。返品とは、その先の販売につながる1地点でなければならない。

73 催事をしたら早めに返品せよ

催事は書店のアクセントである。催事は4種類考えられる。1季節催事、2事件催事、3ミニ催事、4大々的な計画催事である。お客様は書店に変化と発見を求めて来店されているので、催事が読者の足をとめることは確かである。催事は無計画にされるものでなく、自主仕入れに基づく販売である。50%以上の返品では失敗である。企画がまずかったか、品揃えが失敗したか、時期が適当でなかったか反省して次回に備えたい。催事は延勘あるいは長期委託扱いで行われる。請求時期は余裕をみて設定させるが、催事終了後緩慢に対処していると請求が先にたち資金圧迫をすることがある。大催事ほど気をつけたい。折角の成功が何にもならない。催事終了後、総売上、総経費、実益、総売上冊数、版元別売上冊数、日付別実績等を一覧性にして協力版元・取次に送付するのが礼儀であろう。

74 催事品の返品もれに注意

催事は店内の特別催事場で行われる場合と、店内の一部を活用して開かれる場合とある。普段は店頭にない本を一堂に会してお客様に喜んでいただくのが催事である。従って会期終了後も催事品の返品もれが残っていると、それは場違いな本があることになる。催事中には関連吾が多く陳列されてあった関係で落着きの良かった本が返品もれをした途端、珍奇な本になってしまう。催事の返品もれ商品は、その1冊、1冊について版元了解をとり、取次に返品する余計な手間がかかる。入帳処理がおくれ、不明になる場合もある。催事終了後ほ1冊の返品もれのないよう徴底的にさがすべきである。迷える羊が1冊でも2冊でもあると、終了後特別の面倒を見てやらないと元の群れに帰れないのである。返品もれをそのまま見過ごしてしまうと、その本がショタレとなって利益を喰う害虫となるのである。

75 多重陳列による返品もれ

販売に熱心な書店ほど多重陳列が多い。本と読者との出会いをできるだけ多くすることによって買上げに結びつける考えである。神田の三省堂書店は多層階書店ということもあるが、うまく多重陳列をされている。1つのジャンルでなく2つのジャンルにまたがる本、鰐買対象が多客層に亘る本の場合、どこに陳列しておけば読者は発見してくれるだろうか。例は悪いが、丁度ごきぶりの通りそうな通路に数ヶ所くすりを仕掛けるようなものである。この他在庫を大量にかかえ倉庫におくのは惜しい、是非売り度いと考えた時にジャンルに関係なく目立つ所に陳列して売るスーパー手法の売り方がある。仙台の高山書店さんが年末に広辞苑を文芸1の中に平積みして贈り物として売った話は有名である。細かい商品を多重陳列すると、返品もらしをおこしてロスを発生させてしまう。多重陳列に向く商品と不向きな商品があることを知ろう。

76 定期的に返品する

雑誌、書籍は日曜を除いて毎日到着し、陳列、販売される。商品は戦争でいえば弾丸、兵糧のようなものである。雑誌は最新号と先月号が入れ替えられ、先月号は返品となる。書籍は新刊と補充に分けられて送品されてくる。曜日によって量の多少はあるにせよ、毎日の送品である。こうした新刊の発行によって旧刊は棚からほずされ返品される。つとめをおえた弾丸といえるだろう。返品は運送店指定の日に出す。以前は毎日返品を扱ってくれたが、最近は制約が多い。曜日制限、箇数制限、時間制限と書店は運送店の言いなりである。さて送品と返品のバランスであるが、返品率0%は理想であって現実ではない。特に新刊書籍は毎日の送品に対し、月1、2度の返品ではバランスがくずれる。送品過多、過剰在庫になる可能性が高い。取引の収支バランスを考え返品は定期的にしかも回数をふやすことがベターである。

77 姓誌の休・廃刊による返品もれ

雑誌の休・廃刊は多い。因みに1985年195点、84年202点、83年131点、82年121点、81年134点、80年88点と5年連続3ケタの雑誌が廃刊になっている。この一方で創刊も多いが創刊の多い翌年に休廃刊が多くなる現象は、如何に雑誌が根づくのがむずかしいかわかる。取次週報にその都度、休・廃刊が発表になる。その時点で雑誌棚から休廃刊誌を抜き出さないと、返品もれは必定である。陳列期間が長く、不審に思えた時は取次雑誌担当者に問い合わせるのが手っ取り早い。季刊誌、不定期誌も次号発売まで日数があるため返品もれをおこし易い商品である。陳列する時に、入荷日、返品期限を短冊か雑誌の後ろに鉛筆で記録しておくと返品処理が楽である。休・廃刊になった雑誌は雑誌総目録に横線を引いて抹消してしまえば、誰が見ても休・廃刊がわかる。

78 版元の返品了解の確保と活用

書店は10冊本を仕入れて、9冊売れても1冊売れ残ると利益は消えてしまう。利幅の少ない商品の宿命である。従って仕入・販売には細心の注意を払っているが、実際には売れ残り商品が出てくる。その際の相談相手は版元の営業マンである。実状を話してOKのいただける版元と、かたくなな版元と2つに分かれる。後者の場合にはねばることである。その日だめであっても、翌日また電話すればよい。手紙という方法もある。販売熱意を相手にぶつけることである。将来のことを考えて、この書店はメリットのある書店だと印象づければよい。我々の仕事は返品をすることではなく販売なのであるから、このことを強調すれば納得してもらえるのではないか。書店は返品に要する時間より販売に費やす時間が断然多くなくては困る。ご理解いただいた版元には増売で.報い利益をあげてゆきたいものである。

79 出版社出張鼻の名刺を大切にせよ

元来名刺は初対面の際に自分の所属、姓名を知ってもらうために相手に渡すカードである。従って出張員の名刺は販売促進上の話が円滑にゆくように自分を売りこむセールスビィジッドカードである。販売上の目的に手渡すものであって、これを勝手に書店が返品承諾カードに利用したとすれば、明らかに悪用であって、版元と書店の信頼関係は崩壊してしまう。書店が出張員と面識ができると、出版社に連絡をとる際、出張員を窓口にしようとする。本人を通して相談をする。販売、注文、返品についても相談にのってもらう。名刺はあくまでビジネスカードであって、返品了承箋ではない。本人に連絡をとって了解者になっていただくことである。名刺が常にプラス発想の面で利用されなければ、お互い商売は繁盛しない。

80 臨時増刊の返品もれ

雑誌は週刊、旬刊、隔週、月刊、隔月、季刊と発行のピッチが決まっている。つまり定期的に発行されるので定期刊行物といわれる。これに対して不定期に発行される雑誌を不定期刊行物という。取り扱う側から見ると扱い難い商品といえる。発売日がいつなのか、次号はいつ発売されるか見当がつかないので販売予測がたたない。雑誌の臨時増刊号もその類であり、特別の事件、話題がもちあがった時に発行されることが多い。緊急度の高い出版物もある。出版社によっては年4回臨時増刊を出すとか、春季号、秋季号と決めて発行することがある。これは立派な定期刊行物であって新・旧がはっきりしているので返品時期がはっきりわかる。これに反し不定期な臨時増刊号ほ入荷した時に入荷日、返品日を本体に鉛筆で記入しておかなければいけない。短冊があればそれに記入しておく。

81 落丁、汚損本の即時返品励行

落丁、汚損本は欠陥商品であって商品価値はない。しかし発行当初から欠陥商品であることはわからない。読者からの申告によって落丁であることがわかるケースが多い。この瞬間にこの欠陥商品は出版生命を閉じたことになる。汚損本も欠陥商品である。正当な商品としての体裁をなしていないのであるから、店頭に陳列することはできない。一刻も早く返品して入帳させるべきである。落丁・汚損本は書店人が発見するケースより、読者がお買上げ後気付くことが多い。店頭で交換あるいほ受け渡しがあるためにレジ周辺に置き放しのままの状態をよく見かける。倉庫に落丁本がまとめて置いてあることもある。早く返品処理すべきであるのに、放置してあることは原価意識に欠けた嘆かわしいことである。

82 見本商品(実物)の返品もれ

大手版元が大型企画を発表すると、初回配本が発売される迄、予約活動に役立つよう実物見本が作られる。この実物見本は実物であって見本ではない。これと似た言葉に束見本があるが、これは完全な見本であって体裁だけ実物を真似して作られたダミーである。数頁刷り見本があり、あとの部分は白ページである。これに対して実物見本は定価もうってあるので、店頭で売ることも可能である。売ってしまっては予約募集に役立たせることができなくなってしまう。この商品は第1回配本が完了するとお役目ご苦労様となり退役である。束見本に慣れている書店は、そのまま放置することが多い。多くの読者に見られたために手垢がついてよごれている。この商品はすでに請求勘定のたっている商品であるから、第1回配本完了後は直ちに返品をすませないと、ロス商品になり易い。汚れは勲章なのだから恥じることはない。

83 伝票返品は2度見直せ

書店の返品仕様には、伝票を使用してする返品と、手書き私製返品の2通りがある。趨勢として私製返品が増加しているが、しかし専用返品伝票を使用して返品するよう指示される場合もある。これは高額商品、美術書、セット商品、シリーズ商品、教育教材品等、一般委託商品としては出荷されない商品が多い。この専用伝票は優先入帳伝票ともいえる。私製伝票で返品した場合、事故を起こし易いのにくらべ、専用伝票はその心配は全くない。従って、この返品の際には極力、返品もらしをしたくない。一遍に返品し、速やかな入帳処理を願うものである。販売した覚えのない高額商品については、特に留意し、2度3度棚にあたり発見して返品をする。1人の目だけでなく、多くの人でさがした方がよい場合がある。書店名印、返品月日の記入を忘れぬように。

84 旧版本の返品の徹底

既刊本の版を改ためて刊行された本が新版である。改版といわれることもある。この新版と呼ばれる本も、改訂に程度の差がある。内容に相当の訂正、追加など施した場合と、紙型の損傷その他の事情から、旧版の内容を単に組替えるだけの場合がある。同一の書名で出版されて内容に手が加えられた本が新版で、旧版と区別される。従って旧版は新版が発売されると商品価値を失う。書店店頭に新版と旧版が並んで陳列されている程滑稽なことはない。旧版は店頭で直ちに新版と入れ替えられるべきであるが、装丁が変わっていると気づかぬ場合もある。従って、新版○○、改訂版○○という本が出版された時には旧版商品を徹底的に探さなければならない。旧版の本は書名に旧版○○とは書かれていない。新刊出版情報で改訂版の発行状況を掌握する必要がある。

85 高額書藷は特に念入り返品を

委託商品は絵本・文庫本にはじまって数万円する豪華本・高額書まである。取次のパターン配本に高額書籍をインプットしておけば発行時に配本される。書店の中には豪華本販売を特意とする書店がある。特定少数読者が販売対象であっても、文庫本100冊分の定価の高額書が確実に売れることは大変なことである。これらの書店の坪当たり在庫は、普通の書店より遥かに高く、倍近くになる。80万円〜100万円に到達するのは普通である。そのために商品回転率が低くなり、流動資金を多く必要とする結果になる。返品期限のきた商品は念入りに探して返品をすませないと在庫金額が減らない。一般書店においてはより一層、1人の目でなく、何人かの目で高額書籍を棚から発見し、確実に返品をすることが大事である。

86 豪華本の了解返品の徹底

豪華本は回転率の低い商品である。動きが鈍い故に長期陳列の形になり、返品時期を逸することがある。1冊数万円の本をショタレ本にはできない。この金額を純利益で生むためには100万円以上の売上げがなければならない。版元に交渉して了解していただくに当たって、報償券はついていること、本はよごれていないこと、輸送用パッケージもあること、取扱いの良いこと等を連絡する。版元ほなかなかOKをださぬこともあるが、意を尽くしてお願いすることが肝心である。豪華本は万引対象商品でもある。従って店頭陳列期間が長けれは、万引されるチャンスも多くなる。豪華本は回転率が低いので新陳代謝を計り、読者に刺激を与える必要もある。この辺のことも出版社に了解をいただく時のお願いトークである。

87 判型を理解して返品しよう

取次送品伝票には必ず出版物の判型が明示されている。出版量の多いのはB6判(小説類・単行本) である。この他A5判(専門書に多い)、A6判(文庫本・A5判の半分の大きさ)、B40判(新書判・B判全紙から40冊とれるのでこの呼び名が出た)があり、この4判型が判っていれば1般書の抜き出しは殆どできる。豪華本・美術書の判は大きくなりB4判、A3判等になる。返品作業の際、棚から本を抜き出すに当たって、書名、出版社で探す一方、判型がわかれは探す範囲が限定される。書店人として、B6、A5、A6、B初の判型は絶対に覚えなければいけない商品知識である。コピーをする際B4サイズが多いが、文具屋さんも紙の大きさは専門知識として良く身につけている。返品作業の能率化に判型から探す方法もあることを銘記しておきたい。 

88 返品ルールを守ろう

返品にはルールがある。1返品期限を守ること、2報償券のある商品は確実につけること、3雑誌コードは必ず書くこと、4わかり易い数字で書くこと、5了解返品は一版元一伝票が望ましい、6一ダソボール一伝票、7決められたカーボンの色を使うこと、8大きく・重たい返品はつくらないこと、9返品伝票は上から2冊目あたりに、すぐわかるようにはさむこと、11底抜けのダンボールは使わないこと、12箱が大きくぶかぶかの返品は作らないこと、13宛先を正確に書くこと。週刊誌、雑誌、書籍、常備、長期、教育教材等、14指定された返品伝票を使うこと、混載はしないこと、16ダンボールは投げないこと、17書店印を忘れないこと、18返品伝票を入れ忘れないこと、19返品日の記入を忘れないこと、20セット商品の記入は注意すること等返品をあける人の身になって処理し易い様整然とつめ、真心こめて作るようにしよう。

89 長期商品は事情により即返品

Uターン返品のことである。セットを組んだ出版社、取次ぎには申し訳ない気がする。しかし申し込みもせず一方的に送られてきた長期商品は即返品の憂き目をみる。すでに常備商品できちんと棚に並んでいるにもかかわらず、同じ商品が送られてきた時には、汚れた商品だけ入れ替えて即返品することがある。売れゆき良好書のみ残す場合もある。おしなべて長期商品は歓迎されざるセットの場合が多い。書店の事前注文であればこの限りではない。即返品は運賃分だけ書店が損をするので、本意ではないが、在庫過多、商品整理を考えるとせざるを得ない。数日おくれて処理するより、即刻処理してしまったほうが生産的である。常備以外で、新刊中心の売れゆき良好書のセット組は賛成である。長期商品については、今内容の検討がせまられている。

90 返品作業を遅滞させない

返品業務は販売業務同様毎日行わなければいけない性格のものである。何故なら、販売と返品は両輪の如く噛み合って始めてよい商品管理ができるのである。従って返品作業を月に数回とか、遅れ気味になることは望ましいことではない。返品作業台は開梱台同様、夕方にはきれいになくなっているべきである。返品ルールを尊重し、返品商品を滞貨させない書店は、新刊商品、補充商品の開梱、陳列も早いはずである。何故なら、店内以外に商品が置かれていることが不自然に見えるからである。返品作業の遅滞は原価意識の欠如と同じである。返品商品は入帳される以外に価値のない商品なのであるから、一刻も早く書店の手を離れて、取次に送り返すべきである。遅滞になれることが1番恐ろしい。店が肥満になり、生産性が緩慢になってくる。書店に贅肉がついて活動がにぶくなるだけである。

91 売上げ不振の時は返品で応えよ

売上げ不振の時は取次の支払いに苦しむ時である。その理由は、パターン商品が、売上げ不振に関係なく送りこまれ、請求金額と化けるからである。この様な時資金繰りを助けるのは返品である。金融返品といわれる返品である。販売予算に対して不足分の金額分を返品することが、売上げ不振時の対応策である。売上げは急激には上がらない。しかし請求金額が急激に上がることはよくある。忘れていた延勘の請求がたつ、催事品の入帳がおくれ請求が先行する、大量納品の請求がたつ等々ある。このことから書店は請求と売上げのバランスを失うと第1次危険信号が灯る。請求金額引下げ運動を直ちに始めないと第2次危険信号が灯る。売れない時に請求金額に対抗できるものは返品以外考えられない。外商もあるが急激には結実しない。

92 返品は男女をとわず実施

男女の役割分担は家庭の中では崩壊しはじめている。書店の場合も女性の進出がめざましい。特に店売中心の店では女性の生産力は絶大である。書店は典型的な労働集約型業種であって、多品種を扱う関係から人手を要し、細かい仕事が多い。こうした業種性格から考えると女性に向いた業種といえる。体力的な差は男女間で存在する。これがいつしか力仕事は男、事務的な仕事は女と役割分担ができてしまった。返品の荷造りは力を要することは事実である。これが原因してか、返品は男の仕事と固定観念化している書店がないかどうか。男女を問わず返品作業をすることが店のためである。何故なら返品作業中に商品構成、適正在庫、過剰仕入等について勉強ができるからである。新刊のライフサイクルの短いこと、売れる版元、木目の荒い版元、きびしい版元もわかる。返品を経験して始めて勉強できるのである。

93 返品と販売は両輪である

雑誌は7日目売行き調査と定期改正の励行によって返品率を低下させることができる。つまり雑誌は計画仕入、計画販売が可能だということになる。これに対して書籍は、定期改正に相当する計画仕入れのキイがない。ランク・パターンの修正は定期改正のような絶対修正ではなく相対修正であるので、計画仕入れは無理となる。結局、書籍の返品率を下げ計画販売を試みるとすれば、ジャンル別総在庫冊数、ジャンル別総仕入冊数を把握すればジャンル別商品回転率がでる。ジャンル別に期待する回転率を設定し、達成してないジャンルは在庫冊数、仕入冊数をおとす。この数量管理は冊数管理の方がやり易い。売れない分野はどんどん返品をして商品在庫を減らし、伸び率のよい分野のスペースを広げ売上を伸ばす。

94 返品期限の厳守

新刊委託については返品期限が送品票に明記されてあるので、その期限内に返品を完了しないと、買い取ったものとみられるのが業界のしきたりである。返期の印については書店によって異なる。月別の色短冊をはさむ方法、スリップの坊主に返期を書く方法、後ろの見返し隅に書く方法、本の地の喉の部分に書く方法等色々実施されている。これらの印がついていれば素人でも本の抜き出しが可能である。印がなくなっても、発行日に3ヶ月加えて返期をわりだせばよい。長期委託品は補充をしない売り放し商品の関係から3〜6ヶ月の委託期間ぎりぎりまで置かずに途中で返品されるケースが多い。常備寄託商品は新年度分が到着してから旧商品を返品するのが望ましいが、遅延することがある。請求が先にたつ困った現象である。

95 返品から利益は生まれない

委託販売制度が中心になっている出版業界では、返品についての見方が甘かった。つまり売れ残ったら商品を返品する意識が強く、売り残してしまった意識がなかった。さらに本質にさかのぼれば、販売とは何かにつき当たる。読者のニーズ、価値観は多様化、高度化、専門化してきた。こうした読者環境の変化の中で、従来と同じ感覚で委託販売を考えることは許されない。本を右から左へ、売れ残りは返品といった仲介業的な商売は改革をせまられている。現在は流通形態は委託制であるが、商流としては見本委託、注文制度に変わりつつある。読者の立場から販売を考え直さなければならない。従って利益追求は読者研究の中に存在している。売り残しからは利益は生まれてこない。売りもらしの中には利益はある。返品を少なくし、実売を多くすることが利益を生むことである。

96 その1冊の返品が資金ぐりを助ける

仕入、販売、経費のバランスで資金繰りがなりたつ。仕入過多、販売不振、経費増大が最悪の状態である。三者のコントロールを如何にすべきかが経営の手腕として問われるところである。方程式を解くように、この3者のうち経費の固定費は定数として不変である。変動費をプラスすれば経費はつかめる。未知数は販売である。景気次第だからである。仕入は計画的であれば一定値に限りなく近づく。雑誌は仕入計画がある程度可能である。鍵ほ書籍である。書籍の仕入金額に枠をはめればよい。前年度実績から計算して、月別の仕入金額を算出することは可能である。委託3、注文7の割合から書店としては注文をコントロールする。この為毎日の仕入金額を計算し、10日日、20日日と仕入許容量に合った仕入をせねばならぬ。時には許容量オーバーのため月末は仕入ができぬこともあり得る。1冊の返品は1冊の仕入れを可能にする。

97有限売場に無隈在庫は返品率を上げるだけ

書店の売場は一定である。その一定面積の売場に限りなく商品が送りこまれると、資金ショートをおこす。商品在庫に枠をはめる必要がある。現在坪当たり在庫金額は65〜70万円である。20坪書店であれば1、400万円の在庫が標準といえる。棚卸し以後、毎月給仕入額、販売金額、返品金額を計算すれば机上で在庫高は把握できる。適正在庫は望ましい回転率が得られる在庫である。従って回転率が下がった時は過剰在庫の状態であるから返品が必要となる。金融政策、回転率維持のための返品である。この現象は販売に熱心な時ほどおこる皮肉な現象である。増売に向かって、販促、催事を積極的に行うと在庫過多になるのは必定である。絶対面積を考えて、仕入れを考慮し、売り尽くす意気ごみでないと返品率を上げるだけになる。

第5章 逆 送 品

98 逆送出版社の再点検と研究

逆送品は書店の黒枠商品である。逆送の公式理由は次の5つ.である。1期間切、2早期品、3買切、4送品外品、5報奨券なし、がおもてむきの理由である。しかし時には返条付買切品でありながら逆送されてくることがある。取次の販売部門と返品部門の連絡の悪さのしわ寄せを書店が被るのは困りものである。概ね、返品のやかましい出版社は大手版元、新聞社系出版社、無名出版社ではないかと思われる。逆送品はその時点でショタレ品の発生である。この逆送品を見るのは社長・店長・書籍担当者など特定の人だけではいけない。すべての社員に知らしめる必要がある。以後気をつけなければいけない出版社名の意識の昂揚をはかるためである。逆送の経験が販売の教科書になることがある。

99 ねばり強く、版元への返品交渉

逆送品は書店にとっては恥さらしな商品である。商品管理のまずさの象徴であるが、好んで逆送品を生む書店はない。期間切による火傷が大多数であることから考えて、売らんかなの販売姿勢が長期陳列となり、期間切となってしまう。こうした書店の販売努力・意欲を前面に出して返品交渉に当たるべきである。『出版社営業ガイド』(前出)に見られる通り、出版社の返品に対する考え方は弾力的であり、また好意的である。甘えるということではなく、実状を話してご理解を賜らねばならない。1、000円の本のショタレを埋めあわせるためには30、000円の売上げを他で上げなければならない。ショタレ商品の返品交渉日を設けている書店もある。荷物の少ない日の午前中をあてる方法もある。電話賃にかえられぬ実のある仕事である。本来この仕事は無い方がよい。逆送品を反省材料として商品管理の徹底を計ってゆきたい。

100 逆送商品の取扱いの徹底

逆送品の取扱いは概ねひややかである。歓迎されざる商品だからである。しかしここに落とし穴がある。それは逆送品の検品をすぐにやらないために逆送品の不着に気がつかないのである。逆送品は即請求商品であり、運賃も書店負担である。その他、返品しない商品の逆送が時々ある。つまり他店商品を押しっけられるケースである。この発見も、即刻開荷したためにわかったことで、日数がたってからあけたり、結束のまま置いてあったのでは発見できない。また期限内に返品した正当な商品でありながら、先方の誤りで逆送されることもあるから、逆送品はあきらめずに新刊同様解荷し、検品しなければならない。不当逆送の時には直ちに連絡を取り、再返品する。この際逆送運賃分は過払いであるから、歩高入帳で処理してもらうよう交渉するのが筋である。逆送商品の荷傷みのあるときも連絡し引きとってもらおう。